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ブレゲの実験的シリーズ「エクスペリメンタル」、マグネティック脱進機と10Hzトゥールビヨンで描く未来のマリーン像

ハイエンドウォッチの世界で「実験」という言葉は、ときに未来のクラシックが生まれる予告編のような響きを持ちます。ブレゲが発表した「エクスペリメンタル 1」は、まさにその予告編にふさわしい一本です。マリーンの力強いフォルムとブレゲゴールドのケースに、マグネティック脱進機と10Hzトゥールビヨン、コンスタント・フォース機構という先端技術を重ね合わせ、創業者アブラアン‐ルイ・ブレゲの精度追求の精神を現代的に再構成しています。スポーティな見た目でありながら、ムーブメントに宿る思想は極めてシビア。ラグジュアリーなライフスタイルの中で知性を感じさせるタイムピースを求める人にとって、研究室から生まれた一本を腕元に迎えるという選択になりそうです。

【Youtube:ブレゲの投稿が表示されます】


「マリーン」コレクションのフォルムを用い、ブレゲゴールドで作られたこのモデルは、マグネティック脱進機を採用し、高振動(10Hz)でテンプにコンスタント・フォースを供給する初のトゥールビヨンです。

ブレゲ「エクスペリメンタル 1」、マグネティック脱進機と10Hzトゥールビヨンで描く未来のマリーン像

ブレゲは創業以来250年にわたり研究開発を中心に据え、トゥールビヨンや自動巻き、各種脱進機、耐衝撃機構、初期の腕時計など多くの技術革新を生み出してきました。「エクスペリメンタル」はその精神を受け継ぐ実験的シリーズであり、最新の技術と意匠を集約して未来のブレゲ像を示すとともに、限定シリーズとしてコレクターに先進技術をいち早く体験できる場を提供します。


エクスペリメンタル 1、先駆者そのもの

新コレクション第1作となる「エクスペリメンタル 1」は、創業250周年を締めくくると同時にブレゲの新時代の幕開けを象徴するモデルです。長年の研究開発の成果を基盤に、「クラシック」や「トラディション」など既存コレクションの技術資産を踏まえつつ、素材、電磁気、音響など幅広い科学領域を探求するプログラムとして、技術とデザインを密接に結び付けることを目的としています。

歴史的記念碑とのつながり

第1の狙いは徹底した高精度の追求、第2の狙いはブレゲの歴史的遺産と未来をつなぐことです。創業250周年に始動した本計画では、「マリーン」コレクションの一員である点に海軍時計師としての伝統が反映されています。経度委員会のメンバーであり王立海軍時計師でもあったアブラアン‐ルイ・ブレゲの業績を想起させながら、オートオルロジュリーの将来像を先端技術で描き出すことを目指しています。

ブレゲの新シリーズ「エクスペリメンタル」、第1章「エクスペリメンタル 1」が示すR&Dの到達点

 デザインの発想

「エクスペリメンタル 1」は、マリーンの系譜を踏まえたスポーティなケースや特徴的なラグ、交換可能なラバーストラップ、高い視認性を意識した蓄光表示など複数のデザインコードを組み合わせています。歴史的には懐中時計「Ref.3448」の表示レイアウトやムーブメント構造を継承し、過去の意匠と現在のスポーツウォッチ的要素を対話させながら、新しい調和を生み出したモデルとなっています。

ブレゲ No.3448 1820年販売
No.3448 1820年販売


「エクスペリメンタル 1」には、1997年発表のレギュレーター表示の腕時計「Ref.1747」や、アブラアン‐ルイ・ブレゲによるマリン・クロノメーター「No.104」との系譜も読み取れます。いずれも精密計時を象徴する存在であり、アラビア数字の採用やレギュレーター表示などの要素が共有されています。こうした歴史的モデルとの連続性が、「エクスペリメンタル 1」を現代における正統な後継機として位置付けています。

限りない高精度を求めて

技術面では、精度向上に資する特異な構造を採用し、創業者以来の精度追求の精神を引き継いでいます。アブラアン‐ルイ・ブレゲが取得した数少ない特許であるコンスタント・フォースとトゥールビヨンの概念を、マニュファクチュールは現代的に発展させました。マグネティック脱進機と組み合わせたこれらの機構をムーブメントの心臓部に据えることで、新時代の時計製造と科学研究の成果を凝縮したモデルとして展開しています。

ブレゲ「エクスペリメンタル 1」、マリーンのDNAとマグネティック脱進機を融合した高振動トゥールビヨン

時計方程式の要点を整理

精度の追求には、テンプの振幅の安定、重力の影響、衝撃への耐性という少なくとも3つの要素が関わります。ゼンマイの力が低下するとテンプへのエネルギー供給も変動し、振幅の維持が難しくなります。さらに、重力は調速機構全体に作用し歩度に偏差を生みます。日常の使用環境では時計は常に加速度や衝撃にさらされており、それぞれの要因が複合的に精度に影響を及ぼすことが課題となっています。

未来の解決策

ブレゲはこの精度の方程式に対し、マグネティック脱進機とコンスタント・フォースを備えた10Hzトゥールビヨンという一体的な解を提示しました。磁気によりパワーリザーブ全域でテンプに一定インパルスを与えつつ、歯車系との不要な連結を断ちます。60秒で一回転するトゥールビヨンは姿勢差による重力の影響を平均化し、高速振動は衝撃で乱れた振幅を素早く回復させることで、総合的な歩度安定に貢献します。

ブレゲ史上初のマグネティック脱進機とコンスタント・フォースを装備する10Hzトゥールビヨン

マニュファクチュールは2010年以降、制御された磁場活用技術を継続的に発展させ、今回は脱進機に応用しました。磁気面を持つ2つのガンギ車の間を、磁性の爪を備えたアンクルが往復する構造とし、コンスタント・フォース脱進機の発想を取り入れています。連結条件を満たさなければトゥールビヨンは停止し、限界点を超えるとテンプ振幅が最大化されます。機能の切断により慣性の悪影響を抑えつつ、10Hzという高振動をこのサイズで実現しています。

創業250周年を締めくくるブレゲ「エクスペリメンタル 1」、マリーン由来のスポーティさと先端技術が交差するモデル

トゥールビヨンの技術仕様

10Hzトゥールビヨンは、2.5Hzの伝統的トゥールビヨンや3〜4Hzの一般的スイス・アンクル脱進機と比べ大幅に高振動で、より安定した精度を実現します。「エクスペリメンタル 1」は24時間で±1秒というブレゲ・シール認証を受けた科学機器レベルの歩度を備えます。2つの磁気ガンギ車と停止車による構造に加え、シリコン製ひげゼンマイやLIGA製歯車、チタンやニヴァガウスなどの非磁性素材を用いることで、トゥールビヨン機構への磁気干渉を徹底的に排除しています。

最先端のデザイン

「エクスペリメンタル 1」は、直径43.5mmのブレゲゴールド製ケースによる存在感と、「マリーン」や懐中時計「No.3448」のデザインコードを継承したレギュレーター表示が特徴です。サファイア文字盤越しにムーブメント全体が見え、6時に時表示、オフセンターの分、12時位置のトゥールビヨン上に秒が置かれます。二重香箱やシークレットサイン、ブレゲ数字、交換式ラグなど伝統的要素を織り込みつつ、新しい語彙で構成されたデザインへと再解釈しています。

21世紀に誕生した新しいデザイン

ソリッドゴールド製ブリッジは曲線と鋭角的なラインを組み合わせ、サテン仕上げとミラーポリッシュで立体感を強めています。マリンブルーのブレゲゴールドやブルーの香箱ゼンマイがアクセントとなり、サファイア文字盤上の三つのサークルが蓄光インデックスで時刻を示します。ミニッツトラックからせり出すトゥールビヨンとスモールセコンド付き上部ブリッジ、地板に刻まれた銘によって、10Hzトゥールビヨンとマグネティック脱進機の実験性が視覚的に表現されています。

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ブレゲ ブティック銀座 
03-6254-7211
ブレゲ ブティック伊勢丹新宿店 
03-3352-1111 大代表
ブレゲ ブティック日本橋三越本店 
03-6665-0143
ブレゲ ブティック阪急うめだ本店 
06-6313-7863

https://www.breguet.com/jp


【Editor's View】
「エクスペリメンタル 1」は、メゾンのR&D部門が積み重ねてきた研究成果をそのまま腕元に載せたような一本です。マグネティック脱進機や10Hzトゥールビヨンと聞くと、ともすれば理科室的な印象を抱きがちですが、ブレゲはそれらをマリーンのスポーティなフォルムや歴史的懐中時計のレイアウトと結び付けることで、知的でありながらエモーショナルな時計に仕上げています。精度という機能性の追求と、ブリッジや文字盤に宿る美しさが同じ熱量で語られている点が、ハイウォッチメイキングの楽しみを更新してくれるポイントです。メゾンの物語を深く知りたい時計愛好家はもちろん、テクノロジーとクラフツマンシップの交差点に惹かれるファッション感度の高い読者にも、新しいブレゲ像として心に残るモデルになりそうです。

 

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