Héritage L.Vuitton

③スピーディ 時代ごとのサイズの進化

デザインと仕様の特徴


ルイ・ヴィトンの「スピーディ」は、1930年の誕生以来、ブランドの代名詞ともいえる存在としてファッション界に確かな足跡を残してきました。しかし、その魅力が時代を超えて語り継がれる理由は、単なるロングセラーであるという事実だけではありません。スピーディは、そのときどきの価値観やライフスタイルの変化を柔軟に受け止めながら、自らも進化を遂げてきたバッグです。この章では、各年代で登場した印象的な派生モデルにフォーカスし、スピーディがどのようにして時代と呼吸を合わせてきたのかをひも解いていきます。

ルイ・ヴィトン ミニ・スピーディ
ミニ・スピーディ ©BrandJOY Archives


まず最初の大きな転換点となったのが、1978年に登場した「ミニ・スピーディ」です。スピーディ25がオードリー・ヘップバーンによって確立されたスタイルアイコンであるとすれば、ミニ・スピーディはそのコンセプトをさらに凝縮し、ファッションアクセサリーとしての魅力を高めた存在と言えるでしょう。通常のバッグとしての機能は保ちつつも、極限までサイズを小さくしたこのモデルは、持つ人の個性を引き立てるスタイリングアイテムとして注目を集めました。

ルイ・ヴィトン スピーディ・バンドリエール 25 バイカラー モノグラム・アンプラント
スピーディ・バンドリエール 25 バイカラー モノグラム・アンプラント ©Louis Vuitton


1990年代から2000年代初頭にかけては、カジュアル化が進むファッションシーンの中で、より多機能なバッグへの需要が高まっていきます。その流れを汲んで登場したのが、「スピーディ・バンドリエール」です。このモデルは、従来のハンドバッグスタイルに加え、取り外し可能なショルダーストラップを備えており、肩掛けや斜め掛けといった新たな持ち方を可能にしました。ストラップは調節式で、日常の動きに合わせて長さを自由に変更できるため、都市生活における機動性をさらに高める設計となっています。


スピーディ・バンドリエールの登場は、ルイ・ヴィトンが伝統を守りながらも、顧客のリアルなニーズに寄り添い続けている姿勢の表れでした。従来のクラシックなスピーディのイメージに、新たなモダン性を付加したこのモデルは、特に若年層やアクティブなライフスタイルを持つ女性たちから高い支持を得るようになります。フォーマルからカジュアルまで、あらゆるシーンに対応するその多様性こそが、スピーディが長く選ばれる理由のひとつなのです。

ルイ・ヴィトン ナノ・スピーディ
ナノ・スピーディ ©BrandJOY Archives


さらに、近年のミニバッグブームを背景に登場した「ナノ・スピーディ」にも注目が集まっています。ナノ・スピーディは、スピーディ25やミニ・スピーディよりもさらに小型で、スマートフォンやカードケースといった最低限のアイテムだけを収納する超ミニマル仕様です。手のひらサイズの愛らしいフォルムながら、モノグラム・キャンバスの存在感やルイ・ヴィトンらしい仕立ての美しさは健在で、まさに“小さなラグジュアリー”を体現する一品といえるでしょう。

ナノ・スピーディは、サイズの制約があるからこそ、スタイリングの自由度を広げてくれるバッグです。斜め掛けしてストリートライクに、または手提げでドレッシーに。コーディネートのスパイスとして、ファッショニスタの間ではアクセサリー感覚で愛用されることも少なくありません。近年は入荷と同時に完売するほどの人気を誇り、中古市場でも高値で取引されることが続いています。

サイズ展開

スピーディのサイズ展開は、ミニ・スピーディ/ナノ・スピーディ/スピーディ・バンドリエール2025303540、そしてスピーディ・ヴォワヤージュ45までの流れです(“B”は通称でBandoulièreを指します)。ミニは手持ち専用でカードケースなど最小限、アクセサリー感覚で活躍します。ナノは固定ストラップのクロスボディでスマホ+ミニ財布が快適。B20は“いまの街サイズ”で二つ折り財布や小物が収まり、通勤から週末まで万能です。25B25は長財布や手帳まで入る日常の基準。30B30は折り畳み傘やポーチを足しても形が崩れにくく、出張前後の移動にも頼れます。35B35はタブレットや薄手の羽織りも対応し、1泊未満をカバー。40B4012泊のウィークエンドに最適。ヴォワヤージュ45は週末旅行のメインに据えられる容量で、機内持ち込み想定のパッキングにも向きます。

ルイ・ヴィトン スピーディ サイズ表

各サイズの特徴

ルイ・ヴィトン ミニ・スピーディ
ミニ・スピーディ ©BrandJOY Archives
ルイ・ヴィトン ナノ・スピーディ
ナノ・スピーディ ©BrandJOY Archives
ルイ・ヴィトン スピーディ・バンドリエール20
スピーディ・バンドリエール20 ©Louis Vuitton
ルイ・ヴィトン スピーディ25
スピーディ25 ©BrandJOY Archives
ルイ・ヴィトン スピーディ30
スピーディ30 ©BrandJOY Archives
ルイ・ヴィトン スピーディ35
スピーディ35 ©BrandJOY Archives
ルイ・ヴィトン スピーディ40
スピーディ40 ©BrandJOY Archives
ルイ・ヴィトン スピーディ ヴォワヤージュ45
スピーディ ヴォワヤージュ45 ©BrandJOY Archives
  • ミニ・スピーディ
    ルイ・ヴィトンのスピーディ最小級で、アイコン性を掌サイズに凝縮した愛らしいモデルです。カードケースと鍵、リップが収まる最小限設計で、手持ちの所作まで上品に見せます。アクセサリー感覚で差し色に効き、カフェや街歩き、旅行先のサブ使いにも好適です。モノグラムがコーデを引き締め、季節やトレンドを問わず活躍します。

  • ナノ・スピーディ
    ナノ・スピーディはクロスボディ前提の超軽量ミニで、スマホとミニ財布、イヤホンが無理なく入ります。両手が空くため、街歩きや美術館巡り、子どもと過ごす週末にも快適です。Y2Kムードに寄り添いつつ、ルイ・ヴィトンらしい品格は健在。ジェンダーを問わず取り入れやすく、デニムからドレスまで幅広い装いと美しく調和します。

  • スピーディ・バンドリエール20
    スピーディ・バンドリエール20は、今の街サイズを体現する万能選手です。ダブルジップと着脱式ストラップで肩掛けも斜め掛けもスムーズ。スマホ、二つ折り財布、ポーチ、ハンカチまでをコンパクトに収納します。通勤のミニマム装備や週末のショッピングに最適で、装いのボリュームを抑えつつ、ルイ・ヴィトンの存在感をしっかり放ちます。

  • スピーディ25/バンドリエール25
    スピーディ25は日常使いの基準と呼べる王道サイズです。長財布派でも余裕があり、手帳やコスメポーチ、充電器まで整然と収まります。手持ちならクラシックに、バンドリエールならアクティブに印象を切り替え可能です。オンとオフを横断する汎用性が高く、初めてのルイ・ヴィトンや“最初のスピーディ”としても高い満足度をもたらします。

  • スピーディ30/バンドリエール30
    スピーディ30は“ちょい多め”の日の強い味方です。折り畳み傘やポーチ、文庫本、タンブラーまで難なく収納し、フォルムは端正なまま。バンドリエールなら移動の多い日も肩掛けで快適です。きれいめ通勤からカジュアルまで振れ幅が広く、会食や出張前後のシーンでも、ルイ・ヴィトンのきちんと感を損なわずに使い回せます。

  • スピーディ35/バンドリエール35
    スピーディ35は、ワークデイと1泊未満の小旅行を柔軟にカバーします。薄手のカーディガンやタブレット、ポーチ類をまとめても型崩れしにくく、開口の大きいダブルジップで出し入れが快適です。車移動や新幹線でも扱いやすく、バンドリエールの斜め掛けで機動力も十分。実用性とエレガンスを両立する頼れるサイズです。

  • スピーディ40/バンドリエール40
    スピーディ40は、12泊のウィークエンドや短期出張に心強い容量です。着替え、洗面用具、スニーカーが収まり、ジム通いのギアバッグとしても活躍します。大きさに反して佇まいは端正で、ラゲージとデイリーの中間的役割を担います。ストラップ併用で移動負担が軽く、旅先でもルイ・ヴィトンの品格をさりげなく主張します。

  • スピーディ・ヴォワヤージュ45
    スピーディ・ヴォワヤージュ45は、トラベルマインドを色濃く宿した拡張モデルです。アウターやシューズもまとめられる大容量ながら、スピーディ特有の丸みで品よく見えます。週末旅行のメインバッグはもちろん、機内持ち込みにも好適。ビジネスカジュアルにも馴染み、ルイ・ヴィトンの“旅と都市”の美学を一つに結ぶ存在です。



参考資料出典:
・ルイ・ヴィトン製品アーカイブ・公式ストア情報
・ファッションメディアのモデル紹介記事








 

STORY

  • ルイ・ヴィトン200年の物語
  • Héritage(エリタージュ)LV

このコラムについて

この、Héritage(エリタージュ)L.Vuittonのコラムでは、14歳で故郷を旅立った少年、ルイ・ヴィトンの夢が世界を魅了するまでの、200年のストーリーをたどります。

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