2026.09.28
カテゴリ: 新作
ロジェ・デュブイ「ザ メタモーフ マーリン」、手彫りのケースと12体の騎士が刻む神話の最終章
神話を文字盤へ描くだけではなく、ケースそのものに物語を刻み、ムーブメントまで一つの世界として仕立てる。ロジェ・デュブイの「ナイツ オブ ザ ラウンドテーブル」最終章、「エクスカリバー ザ メタモーフ マーリン」は、そんな発想を形にした世界限定28本のタイムピースです。45mmのピンクゴールドケースにはマーリンの二つの姿を手彫りで描き、文字盤の周囲には高さ6mmの円卓の騎士たちを配置。さらに、その奥には57個のブロックからなる森と、自社製キャリバーRD821が収められています。神話、彫刻、建築、機械式時計という異なる表現が一つに重なる、ロジェ・デュブイならではの作品です。
世界限定28本という希少性だけでなく、文字盤そのものがひとつの立体作品として構築されている点に、「ザ メタモーフ マーリン」の個性が表れています。4種類の素材からなる57個のブロックを異なる高さで組み上げ、深いグリーンの景色に奥行きをもたせた文字盤は、マーリンが姿を変える神秘の森を思わせる仕上がりです。さらに今回、シリーズとして初めてケースミドルに手作業によるマイクロレリーフの彫刻を採用。マーリンの変身する姿をケースに刻み込む一方、文字盤の周囲には12体の円卓の騎士を高さ約6mmのマイクロスカルプチャーで配置しています。ケースの細部だけでも完成までに長時間の手仕事を要し、表から裏まで物語とクラフツマンシップが連続するタイムピースです。

三部作を締めくくる最終章
アーサー王伝説を時計製造へと置き換えてきた「ナイツ オブ ザ ラウンドテーブル」は、ロジェ・デュブイを代表する創造的なシリーズのひとつです。10年以上にわたり、12人の騎士を囲む円卓を中心に、メティエダールの技術、立体的な建築表現、そして機械式時計の精密さを組み合わせながら、伝説の異なる場面を描いてきました。シリーズの魅力は、神話の情景を文字盤へ写し取るだけではありません。ひとつの物語を素材や構造、彫刻、ムーブメントといった時計そのものの要素へ翻訳することで、着用できる芸術表現へ変換しているところにあります。第4章となる今回は、アーサー王を導いた魔術師、予言者、賢者として知られるマーリンに焦点を移し、その人物像をこれまでとは異なる角度から掘り下げます。

マーリンを描いた物語は、2024年の「全知全能のマーリン」、2025年の「魔術師マーリン」に続く流れの中で、「ザ メタモーフ マーリン」へと結実します。最初の作品では全知の叡智、次の作品では魔術の力に光を当て、最終章で主題となるのは、自在に姿を変える能力です。その象徴として選ばれたのが、神秘の森を歩く白鹿。マーリンの変身と、目に見える世界と不可視の世界を結ぶ存在という二重の意味を持たせています。こうした神話的なモチーフを、単なる装飾として文字盤に添えるのではなく、森の構造、ケースの彫刻、12体の騎士たちの造形へと分解して再構成。古代から語り継がれてきた物語を、現代のオートオルロジュリーに置き換えています。

建築的な風景
文字盤に広がるのは、マーリンが何度も姿を変え、湖の乙女が暮らすと伝えられる神秘の森です。ただし、その表現は写実的な風景画とは異なります。六角形を基調とするシリーズ固有のデザインコードを引き継ぎながら、着想源のひとつであるジャイアンツ・コーズウェーの玄武岩柱状節理を思わせる幾何学を積み重ね、深いグリーンの中に森の密度をつくり出しています。岩の連なりにも似た構造が視線の奥へと続くことで、文字盤に遠近感が生まれ、単一の平面では捉えきれない景色へ。神話上の森を建築的なランドスケープへ変換することで、ロジェ・デュブイらしい大胆な造形言語に落とし込んでいます。

その立体感を支えているのが、57個のブロックに施された異なる素材と仕上げです。グリーンCVDコーティングを施したガラス、ポリッシュ仕上げのピンクゴールド、透明なガラス、そしてクリスタリウムのインレイを組み合わせ、それぞれを異なる高さに配置。光が当たる角度によって反射の仕方が変わるため、文字盤は静止した景色ではなく、手首の動きに合わせて表情を変える構造になっています。ロジェ・デュブイは森を細密に描く代わりに、素材の透明感、金属の輝き、表面の質感、立体構成の差によってその気配を表現しました。4種類の素材と4つの装飾技法をひとつの文字盤へまとめることで、神秘性と建築的な精密さを同時に感じさせる仕上がりです。

伝説を彫刻
物語の舞台は、文字盤だけでは完結しません。「ザ メタモーフ マーリン」では、シリーズで初めて18Kピンクゴールドのケースミドル全面に手作業によるマイクロレリーフを施し、ケースそのものをマーリンの物語を伝える場へと変えています。彫り込まれるのは二つの姿。ひとつは自在に姿を変える力の象徴である神話の白鹿、もうひとつは本を手にした賢者としてのマーリンです。後者には、マーリンの知識と全知の叡智を描いた第1章へのつながりも込められています。ケース一面を取り囲む微細な彫刻には約70時間を要し、文字盤の外側からもメティエダールの表現を堪能できる構成です。

文字盤を囲む12体の「ナイツ オブ ザ ラウンドテーブル(円卓の騎士たち)」も、この時計を構成する重要な要素です。高さわずか6mmのピンクゴールド製フィギュアは、鋳造後に一体ずつ専門の彫刻職人の手へ渡り、造形、彫刻、ブラックパティナまで最大3日間をかけて仕上げられます。それぞれ異なる姿勢や表情を与えることで、12人が同じ形のミニチュアではなく、それぞれ固有の個性を持つ存在として文字盤上に現れます。さらにリュウズの左右には、聖剣エクスカリバーを思わせるソードガードを配置。グリーンをまとったリュウズは、白鹿が姿を現す深い森のイメージを引き継ぎ、物語の細部を手元へつないでいます。

表現力を追求した技術
これだけの立体造形を支える心臓部として選ばれたのが、自社で開発、製造、手仕上げまで行う自動巻きキャリバーRD821です。172個の部品で構成されるムーブメントは、45mmのエクスカリバーケースに収まりながら、立体的な文字盤を成立させるための専用設計を採用。時刻表示を担う機構そのものにも、ジュネーブ・シールの基準に沿った手仕上げが施されています。コート・ド・ジュネーブなどを含む14種類の装飾技法を取り入れ、機能だけでなく、ケースの内側まで美しく仕上げることを徹底。表側で神話を語るだけでなく、内部の機構にもジュネーブ時計製造の技術と職人の仕事を凝縮しています。

45mmのピンクゴールドケースにはサファイアクリスタルを組み合わせ、立体的な文字盤をさまざまな角度から眺められる構成にしています。ケースバックには中世の城のステンドグラスから着想を得た360°スケルトン仕上げのオシレーションウェイトを配し、表側の神話的な景観とは異なる方法で機械芸術を見せる設計です。世界限定28本の「エクスカリバー ザ メタモーフ マーリン」は、10年以上続いてきた「ナイツ オブ ザ ラウンドテーブル」の物語を締めくくる最終章。マーリンの変身というテーマを、ケースの彫刻、騎士たちのマイクロスカルプチャー、立体的な文字盤、そして機械式ムーブメントまで連続させることで、神話を現代のオートオルロジュリーへ置き換えています。

エクスカリバー ナイツ オブ ザ ラウンドテーブル ザ メタモーフ マーリン
自動巻きキャリバーRD821
48時間パワーリザーブ
ピンクゴールド製ケース
ケース径45㎜
ケース厚さ16.87mm
防水性3 気圧 (30m)
カーフストラップ
ピンクゴールドのフォールディングバックル
限定28本

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【Editor's View】
「ザ メタモーフ マーリン」で特に強く感じられるのは、物語とクラフツマンシップが別々に存在していないことです。ケースには約70時間をかけて微細な彫刻が施され、文字盤の12体の騎士には一体につき最大3日間の手仕事が費やされるなど、神話を形にするための工程そのものが作品の一部になっています。ムーブメントにはRD821を採用し、172個の部品をジュネーブ・シールの基準に沿って仕上げるという技術的背景も、ロジェ・デュブイが掲げる現代的なオートオルロジュリーの姿勢につながっています。メゾンは1995年の創設以来、完全統合型のマニュファクチュールを基盤に、伝統的な時計製造を現代的なデザインと組み合わせてきました。自社製造の工程を一貫して掌握する体制と、ジュネーブ・シールによって認められる手仕上げの基準は、今回のような複雑なメティエダール表現を時計として成立させる土台になっています。神話の壮大さだけに頼らず、彫刻、素材、機械、仕上げという具体的な技術へ落とし込むことで、マーリンの最終章を「物語を持つ時計」から「物語そのものが構造になった時計」へと昇華させています。
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