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オーデマ ピゲ 新製造拠点「Arc」をル・ブラッシュに開設、ジュウ渓谷と歩む150年目のマニュファクチュールの現在地

オーデマ ピゲの時計に惹かれる理由は、ラグのラインや文字盤の陰影といった目に見える美しさだけではないはずです。それを生み出す土地の空気や、工房に満ちる静かな集中もまた、一本の時計に宿る物語の一部です。スイス・ジュラ山脈に抱かれたジュウ渓谷で育まれてきたマニュファクチュールが、新たにル・ブラッシュに構えた製造拠点「Arc」は、その物語を次の章へと進める舞台装置のような存在です。ガラスファサードやグリーンルーフなどの環境配慮型のディテールは、自然と共存しながら精緻な時計づくりを続けるという意思のあらわれでもあります。職人の手仕事とテクノロジー、そして土地との結びつきがどのように形になっていくのかを想像しながら、この新拠点を見つめると、オーデマ ピゲのタイムピースが纏う背景の豊かさが、またひとつ鮮明になっていきます。

オーデマ ピゲは2026年1月22日、創業150周年を祝う継続的な取り組みの一つとして、ル・ブラッシュに新たな製造拠点を完成させました。Arc(アルク)という名前が与えられたこの施設は、総面積23,700㎡というスケールを持ち、ジュウ渓谷のさまざまな場所に散らばっていた製造チームが一堂に会する場として機能します。これにより、地域と歩み続けるマニュファクチュールとしての姿勢を改めて示すとともに、ジュウ渓谷への継続的な貢献と深い関わりを視覚的にも体現する存在になっています。建物づくりにおいては、ワークスペースの柔軟性と働く人の快適性、そしてサステナビリティが重視され、その結果としてMinergie-ECO®認証を取得しました。この新拠点は、環境と共存しながら精緻な時計を生み出していくという長期的なビジョンを支え、メゾンが未来へと歩みを進めるための象徴的なアーチのような役割を担っています。

オーデマ ピゲがル・ブラッシュに新拠点「Arc」を落成、23,700㎡の施設で職人の技とサステナビリティを結ぶ場へ
321mのファサードが印象的なアルクはジュウ渓谷に点在する専門技術者と職人たちを一拠点に集め、協働と意見交換を促進する。© Courtesy of Audemars Piguet.


協働を核とした野心的プロジェクト

オーデマ ピゲの歴史を遡ると、創業初期には「エタブリサージュ」と呼ばれる時計づくりの仕組みが存在していました。ムーブメントやケースなど、部品ごとに専門性を持つ職人や工房がそれぞれの技を発揮し、連携することで一本の時計が完成するというスタイルです。その中でメゾンは、共同作業の精神を大切にしながらも、一人ひとりの職人が持つ固有の才能を尊重し、育んできました。この理念を次の時代へつなぐために、新拠点Arcのプロジェクトはスタートしています。ジュウ渓谷内に分散していた技術部門や専門チームを、ひとつの場所に集約することで、ノウハウや感性が日々交わり合う環境を整えることが目的でした。互いの技術が同じ屋根の下で刺激し合うことで、これから生まれるタイムピースにどのような表現が加わっていくのか、期待を高める構成になっています。

アルクの外観を象徴するのが、大きく弧を描くガラスファサードです。このファサードには電気調光技術が組み込まれており、日射しの強さや熱の変化に合わせて自動的に色調を変える仕組みになっています。室内には豊かな自然光がやわらかく差し込みつつ、外の景観とのつながりも損なわないよう配慮されている一方で、作業環境としての快適さが常に保たれるようコントロールされている点が特徴です。職人たちの集中を支える光環境と、ジュウ渓谷の風景との共存を両立させるこのファサードは、メゾンが自然とテクノロジーの調和をめざしてきた姿勢を、建物そのものに刻み込んだかたちだと言えます。

オーデマ ピゲ「Arc」、ル・ブラッシュの新製造拠点に集うチームとMinergie-ECO®認証が示す未来へのビジョン

持続可能性を備えた産業建築

アルクは、ル・ロックルやメイランにある既存のオーデマ ピゲの製造拠点と同じく、スイスでも最高レベルとされる環境・健康基準を満たすMinergie-ECO®認証を取得しています。このプロジェクトが始動した初期段階から、環境への負担をいかに抑えるかという視点が建物づくりの中心に据えられました。エネルギー効率や素材選びだけでなく、日々の運用まで見据えた包括的なアプローチによって、ジュウ渓谷の自然環境と共に呼吸するマニュファクチュールであり続けるための土台が築かれています。時計という精密なオブジェを生み出す場所そのものが、持続可能性を意識した存在であることを明示することで、メゾンの価値観がより立体的に伝わる構成になっています。

アルクが建つ土地については、部分地域計画(Partial Land Use Plan)に基づき、周辺環境との調和を最優先に進められました。なかでも象徴的なのが、専用のグリーンルーフによる屋上緑化です。この屋上部分は、昆虫や鳥類にとって快適な環境を再現することを目指してデザインされており、生態系の一部として機能する場を建物の上に重ねています。同時に、ジュウ渓谷のパノラマを一望できる場所としての側面も持ち合わせ、人と自然が交わる新たな視点を提供するスペースになっています。マニュファクチュールの屋根が、地域の生物多様性と景観体験の両方に貢献しているという事実は、土地との関係性を大切にしてきたオーデマ ピゲならではのアプローチと言えます。

全長321mにも及ぶガラスファサードには、曲線に沿って刻まれた独特の表面パターンが施されています。遠目にはしなやかなラインを描く建築的な美しさが際立ちますが、そのテクスチャーは見た目の印象だけを追求したものではありません。鳥類がガラスを空と誤認して衝突してしまうリスクを軽減し、反射によるまぶしさも抑えるという実用的な役割を担っています。さらに建物の周囲には高さ80cmの壁が設けられ、雨水を自然の排水路へと導くことで、周辺環境を傷つけることなく洪水リスクに備える仕組みが整えられています。ディテールの一つひとつに自然との共生への視点が込められている点は、表から見える意匠以上に重要なメッセージを放っています。

新しい製造拠点となるアルクは、世代を超えて受け継がれてきた時計職人の技と、最新のテクノロジーを交差させる場として誕生しました。ここでの取り組みは、オーデマ ピゲの歴史において新たな節目を刻むと同時に、ジュウ渓谷に深く根ざしたメゾンであるという自らのアイデンティティを改めて映し出しています。土地に流れる時間と職人たちの手仕事、その両方を包み込む器としての役割を担うことで、これから生まれてくるマスターピースにも新しい物語が重ねられていきます。アルクは、過去から受け継いだ価値観と未来への視線をひとつに結び、マニュファクチュールの歩みを次のステージへと導く存在になっています。

https://www.audemarspiguet.com/com/ja/home.html


【Editor's View】
オーデマ ピゲがル・ブラッシュに完成させた新拠点アルクは、単に規模を拡大した工房という枠を超え、マニュファクチュールの精神そのものを立体化したような場所だと感じます。創業者一族による経営が続き、1875年からジュウ渓谷で職人たちを育んできた歴史があるからこそ、ガラスファサードやグリーンルーフ、Minergie-ECO®認証といったディテールの一つひとつが「この土地で時計をつくり続ける」という意思表明に見えてきます。エタブリサージュの時代から変わらず受け継がれてきた協働の精神と、境界を押し広げる先進性が、アルクという器の中で再び出会うことで、これからのコレクションにも新しい表情が生まれていくはずです。ジュウ渓谷の風景や空気感に思いを馳せながらオーデマ ピゲの時計を身につけるとき、この新拠点の存在が、腕元に流れる時間をより豊かに感じさせてくれるのではないでしょうか。

 

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