2025.10.06
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フェンディ アートとアルティザンのプロジェクト「ロック ザ クラフト」始動、ピーカブーへの拡張も注目
服の上にのる一点のレザーが、空間のアートと呼応したら、日常はどれほど豊かになるのでしょうか。フェンディの「ロック ザ クラフト」は、その問いにミラノの現場で答えます。アーティストの発想とメゾンのサヴォワール フェールが交わり、素材や仕上げが新しい物語を帯びて立ち上がります。ライブで進む制作は、作品が生まれる温度をそのまま体感できる貴重な機会です。残材を活用した受注生産のピーカブーまで含め、アートと装いが同じ地平で語られる瞬間に立ち会えることが、このプロジェクトの最大の魅力だと感じます。
フェンディ(FENDI)はミラノの新ブティックで、アートとクラフトの相互作用を軸に据えた「ロック ザ クラフト(Rock the Craft)」を発表しました。異なる表現が交差する現場にクラフツマンシップの未来像を重ね、アート、アルティザン、アーティストが互いの技を読み替える構図を提示します。来店体験の質を高めながら、レザー表現の可能性を拡張する実験の場になっています。
会場は「パラッツォ フェンディ ミラノ」3階のアトリエです。アーティストのエドアルド・ピエルマッテイと、メゾンのレザーおよびファー職人が、制作と展示をライブで行います。伝統技術とサステナブルな実践を足場に、工程や素材の使い方を更新する試みで、観るだけでなく「作られる過程」を共有できるのが特徴です。クラフトの裏側が可視化されることで、完成品への理解と愛着がいっそう深まります。
出発点は、ピエルマッテイが各フロアのために用意した、3Dヴォールトに着想を得た特注アートワークです。着色セメントを絞り袋で載せ、硬質な素材に柔らかな痕跡を与える手技を行い、その装飾的ジェスチャーを、フェンディのファー職人とともに独自の象嵌技法でレザーやファーのタブレットへ転写します。建築的な量感とテキスタイルのしなやかさが交わる瞬間を、質感の変化として体験できます。
アートワークの「柔らかさ」は、白いキャンバス地でカスタマイズされた「ピーカブー(Peekaboo)」にも反映されます。店頭には「アーティスト ピーカブー(Artist Peekaboo)」の最新作が並び、過去コレクションの残材を活用した受注生産の限定モデルも展開されます。循環性への意識と高度な職人技が同居し、バッグがアートと日常を往還する媒体として機能します。手に取る瞬間から、装いとの対話が始まります。
「ロック ザ クラフト」は、フェンディのクラフツマンシップを新視点で読み直すプロジェクトです。メゾンのDNAに新しいエネルギーを注ぎ込み、アート、アルティザン、アーティストを中心に置いた意外性のあるビジョンを示します。コラボレーションを起点に創造性を育むことで、ブランドの歴史的文脈を強化しつつ、日常に溶け込むプロダクトの魅力を明快に伝えます。ファッションの実用と表現の愉しさが同じ温度で結びつきます。

エドアルド・ピエルマッテイは1992年アンコーナ生まれ、トリノ拠点のアーティストです。古代壁画、とりわけアッシジのフランチェスコ大聖堂のジョットに学び、欠けや経年の痕跡に価値を見いだします。着色コンクリートを手や絞り袋で薄く広げ、硬質な素材を軽やかな層へと変換。焼き菓子の技法に通じる所作で表面を再構築し、権威的な記念性に対する批評性を帯びた、サイトスペシフィックな介入を行います。


【Editor's View】
このプロジェクトの肝は「手触りの更新」です。建築的なセメントの重さが職人の技で可塑化され、ピーカブーという実用品に移植されることで、アートが日常の運動量を獲得します。残材活用という循環の視点は、上質を選ぶ行為に現実的な説得力を与えます。ミラノを訪れる読者にとって、作品とバッグを同一線上で体験できる場は希少です。装いに質感の物語を足したいとき、ここでの気づきが次の一手になります。
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