2025.09.28
カテゴリ: コレクション
ティファニー「ブルー ブック 2025:シー オブ ワンダー」海の物語が完結、シェルからマーメイドまで海の造形と宝石の対話
海は記憶の層を重ねたアーカイブのように、形と色を繰り返し、少しずつ更新していきます。ティファニー「ブルー ブック 2025:シー オブ ワンダー」のフォールは、その蓄積を洗練へと変換する締めくくりの章です。貝殻やウニ、人魚、そして海の花。自然がつくる秩序と偶然を、ハウスは宝石と金属で再構成し、触れた瞬間の高揚までを設計します。数値で語れるのはカラットや素材ですが、装う人が得るのは時間と記憶の手応えです。式典のために選ぶ一本から、日常の延長で身につける一点へ。ブルー ブックは、ハイジュエリーの楽しみ方を静かに更新しています。
ハイジュエリーの頂点を描くティファニーの「ブルー ブック 2025:シー オブ ワンダー」から、物語の掉尾を飾るフォール コレクションが公開されます。ジュエリー & ハイジュエリー部門チーフ アーティスティック オフィサー、ナタリー・ヴェルデイユの手で、スプリングとサマーに続く連作が約40作品へと結実し、海が秘める果てしない神秘をさらに深く掘り下げます。章立てで展開してきた世界観がここで完結するため、コレクション全体のキーピースを一度に俯瞰できるのが魅力です。旅や社交のシーンで印象を更新したい人にとって、素材と構築の選び方を学べる示唆が多い章だと感じます。
アーカイブに刻まれたジャン・シュランバージェのクリエイションを出発点に据えた「ブルー ブック 2025:シー オブ ワンダー」は、彼の審美眼を現代の技術で呼び起こし、海の有機的なフォルムと幻想的な美を賛美します。フォールでは「アンカー」「アネモネ」「オーシャン フローラ」「シェル」「アーチン」「マーメイド」が合流し、稀少なジェムストーンと卓越したクラフトマンシップ、そして詩的なストーリーが重奏的に響き合います。歴史の文脈を踏まえながら新しい装いへ橋を架ける構成は、ハイジュエリーを式典だけでなく自分らしい装飾として楽しみたい方の、導きになるはずです。
ティファニーのジュエリー & ハイジュエリー部門チーフ アーティスティック オフィサー、ナタリー・ヴェルデイユは「『ブルー ブック 2025:シー オブ ワンダー』のフォール コレクションでは、夢のような海中世界の探求をさらに掘り下げています。アンカー、アネモネ、シェル、アーチン、マーメイド、オーシャン フローラの各章にわたり、ジャン・シュランバージェが着想を得た海の造形美を現代的な視点で再解釈し、新たな発見をもたらします。それはトランスフォーメーションの詩的な表現であり、海の美しさが現代的な傑作の中に鮮やかに再構築されています」と語ります。デザイナー自身の言葉が示すとおり、固定観念をほどきながら形を変えるプロセスが魅力で、コレクションを身に着ける側もテーマの変化を装いに映しやすいと感じます。
「アンカー」では、1939年にジャン・シュランバージェが手掛けたルビー、アメシスト、ピンク サファイヤのブローチを源流に、錨の均整と幾何学の強さを現代のジュエリーへ移し替えます。中央にクッション カットのダイヤモンドを配したペンダント、リング、ブレスレットが登場し、ペンダントはプラチナと18Kゴールドで2カラット超、リングは5カラット超、ブレスレットは1カラットのダイヤモンドを主役に据え、周囲の繊細なダイヤモンドで輝度を高めています。構造の安定感が造形のきれいさに直結するため、スーツやドレスの直線を引き立て、記念日の装いにも頼れる軸になります。
「アネモネ」は、ジャン・シュランバージェが描いたイソギンチャクの遊び心を、動きのあるリズムへ昇華した章です。彫刻的なゴールドアクセントとダイヤモンドが連なるネックレスには、アフリカのモザンビークの名高い鉱山から調達されたアンエンハンスメントのルビー3石、合計約5カラットを配し、生命感に満ちた赤の表情を際立たせます。色の強さとラインのしなやかさが共存するため、ミニマルなワンピースに一点だけ重ねるだけで視線が集まり、特別な夜も写真に残る存在感を叶えます。
「シェル」は、海が刻む層と曲線を立体的に写し取った章です。プラチナとゴールドが連なり、うねるラインの先端にホワイト ダイヤモンドとイエロー ダイヤモンドをセットして光の起伏をつくります。中心作のブローチは、8.62カラットのグリーン トルマリンを核に据え、ホラガイがもつ左右非対称の美を思い切ったバランスで表現します。硬質な金属と有機的な石の対話が要で、ジャケットのラペルに一点添えるだけで輪郭のある印象に仕上がります。
「アーチン」は、自然とシュルレアリスムの交差点を示す提案です。ウニの放射状の対照性を造形の核に据え、艶の層を重ねることで海面のきらめきを描きます。19世紀から続くパイヨン エナメルの技法を用いることで、虹色の質感を想起させる発色を獲得しました。複数の艶が重なる設計は、ドレスの無地面にも映え、動きに合わせて表情が変わります。技巧を前面に出しながらも、造形はミニマルに整えてあるため、心地よい余白を残します。
「マーメイド」は、人の想像がつくり出した存在を、現実の素材で輪郭づける試みです。プラチナとローズゴールド、ダイヤモンドで組み上げたブローチは、尾ひれに10カラットを超えるブラック オパールを配し、深海の色変化を閉じ込めています。リング、イヤリング、ネックレスも同テーマで揃い、光の角度によって表情が移ろう設計です。ブラック オパールの存在感は装いの重心を下げすぎないため、首元の開いたイブニングにも相性が良く、写真やステージでの視認性にも強い章です。
「オーシャン フローラ」からは、ハイジュエリー タイムピースが登場します。マザー オブ パールの文字盤に、12時位置のインデックスとしてターコイズを一点配し、同意匠のダイヤモンド ブレスレットの装飾と呼応させた構成です。時を示す実用性に、美しいブレスレットとしての存在感を重ねる発想で、袖口の所作まで計算に入れたデザインといえます。時計とジュエリーを別で選ぶ手間が要らないため、フォーマルの統一感を求める人に最適です。
フォール コレクションは、9月19日にイタリア ミラノで行われたエクスクルーシブなハイジュエリーイベントで披露され、「ブルー ブック 2025:シー オブ ワンダー」の物語は最高潮に達しました。スプリング、サマー、フォールと重ねた章を一望できたことで、ハウスが描いてきた海の記憶が一つの地図として結ばれた印象です。披露の場をミラノに定めた点も象徴的で、国際的な視点でハイジュエリーの価値基準を提示する意思が明確に伝わります。
【Editor's View】
本コレクションで印象的なのは、素材の物語化です。トルマリンやブラック オパールのように表情豊かなストーンを核に据えるなら、服は色数を絞り、質感に比重を置くとジュエリーの陰影が際立ちます。パイヨン エナメルの艶は写真映えに優れ、セレモニーからギャラリーオープニングまで幅広いシーンに対応します。タイムピースは装いの調律役として機能するため、ブレスレットとの一体設計は時間の概念すら装飾へ変える好例です。ブルー ブックは鑑賞するだけでなく、身につけて完成するアートだと再確認できました。
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