2026.09.25
カテゴリ: 新作
パネライ「ルミノール フィレンツェ オットジョルニ」、100周年を迎えた本店の記憶を刻む限定モデル
フィレンツェの街並みに根を下ろし、時計店から工房、そしてパネライを象徴するブティックへと姿を変えてきたサン・ジョヴァンニ広場の店が、2026年に100周年を迎えました。その節目を飾るのが、1960年代のプロトタイプに宿っていた意匠を現代へ引き継ぐ2つの「ルミノール フィレンツェ オットジョルニ」です。「PANERAI FIRENZE」の文字、機能から生まれたリューズプロテクターのディテール、8日間のパワーリザーブ。過去を懐古するだけではなく、必要から生まれたデザインを現在の時計へとつなぐ。その姿勢こそ、フィレンツェとともに歩んできたパネライの現在を映しています。

パネライ ブランド エキシビション「イマージョン」
ルミノール フィレンツェ オットジョルニ 左からPAM01734、PAM01794
フィレンツェ本店について、パネライCEOのエマニュエル・ペランは、ブランドの歴史や時計製造の知識、そして一つひとつのタイムピースに受け継がれる伝統と革新を、世界各地から訪れる人々へ伝えるうえで重要な場所だと語っています。2026年に迎える100周年は、パネライにとって単なる記念日ではありません。ブランドの原点であるフィレンツェ、その中心に位置するサン・ジョヴァンニ広場という舞台で、これまで積み重ねてきた歩みを見つめ直す機会となります。
パネライの始まりをたどると、1860年にジョヴァンニ・パネライがフィレンツェのポンテ・アッレ・グラツィエに開いた最初の時計店へ行き着きます。そこは時計を扱う店舗であると同時に工房でもあり、さらにフィレンツェ初の時計学校としての役割も担っていました。その後、ポンテ・アッレ・グラツィエの取り壊しを経て、店はフィレンツェ市内で複数回の移転を経験します。そして1926年、最終的に拠点を構えたのが、フィレンツェ大聖堂の建築美を望むサン・ジョヴァンニ広場でした。大司教宮殿の一角に位置するこの場所が、今日まで続くパネライの象徴的なブティックへとつながっています。
この店舗の役割は、時計を販売することだけにとどまりませんでした。店内には熟練した時計職人が働く工房が設けられ、取り扱う時計の組み立てや修理もここで行われていました。パネライ家は、当時の主要な時計メーカーとの幅広い交流を通じて時計製造に関する知識を蓄積し、それと並行してイタリア海軍との関係を深めていきます。防水性や発光性という、現在のパネライを象徴する要素も、海軍向けの計器やプロフェッショナルなツールウォッチを手掛ける中で培われたものです。フィレンツェの店舗は、商いの場であると同時に、後のパネライを形づくる技術と知識が集積していく拠点でもありました。
イタリア海軍との緊密な協力関係は、軍事機密を伴いながら長く続き、パネライが民間向け製品を発表した1993年9月10日までその内容が広く知られることはありませんでした。その後、歴史的な店舗は改装を経て2001年にパネライ初の直営ブティックとして再び扉を開きます。現在は、ルミノール、サブマーシブル、ラジオミールの現行コレクションとともに、過去に製作された時計や歴史的な計器、アーカイヴを展示。時計職人が実際に作業する工房も備え、ブランドが培ってきた技術を現在へつなぐ場として機能しています。100年の時間を刻んできたフィレンツェ本店は、パネライの歴史を過去の記録として保存するだけでなく、その技術と精神を今へ受け渡す場所となっています。
フィレンツェ本店の100周年という節目に合わせ、パネライは9月10日から19日まで、マリノ・マリーニ美術館で「イマージョン」展を開催しました。ブランドの100年にわたる歩みを体験する場とともに発表されたのが、2つの限定モデル「ルミノール フィレンツェ オットジョルニ PAM01734」と「PAM01794」です。フィレンツェを起点に培われてきた時計製造の歴史を、現代のタイムピースへと結び直した2作は、今回の記念すべき一年を象徴する存在です。
2つのモデルを特徴づけるのは、1960年代のユニークなプロトタイプから受け継いだディテールです。12時位置には「PANERAI FIRENZE」の刻印を配し、さらにPAM01734では、リューズプロテクターの内側に施された特徴的な切り込みを再現しています。いずれも装飾のために加えられたものではなく、かつてイタリア海軍が求めた実用性に応える過程で生まれた意匠です。歴史的な仕様を現代の時計へ取り入れることで、パネライが歩んできた技術の系譜を視覚的にも伝えています。
とりわけPAM01734に採用されたリューズプロテクターの切り込みには、パネライの設計思想が端的に表れています。これは手巻きムーブメントの巻き上げをより確実に行うため、ダイバーが試験的に使用していた機能的な変更に由来するもの。厚手のグローブを着用した状態や、水中など視界が限られる環境でもリューズを操作しやすくするための工夫でした。必要な機能を突き詰める中からデザインが生まれるという考え方は、当時のプロフェッショナル向け計器から現代のパネライへと連続しています。
2つのモデルに搭載されるのは、自社製手巻きキャリバーP.5000です。毎時21,600回で振動し、8日間のパワーリザーブを備えることで、パネライが受け継いできた長時間駆動の思想を形にしています。文字盤には真鍮を用い、日付などの追加機能を設けず、必要な表示だけを残した構成に。切り抜かれたアラビア数字とインデックス、スーパールミノバ®を施したダブルペンシル型の針が視認性を支えます。円形のブラッシュ仕上げによる文字盤には「PANERAI FIRENZE」の文字をトーンオントーンで配し、光の角度によって表情を変える仕上げが印象を残します。
最後にフィレンツェとの結びつきを強調するのが、素材とストラップの選択です。わずかに湾曲したドーム型サファイアクリスタル風防は、1960年代のルミノールに使われていたPERSPEX®を思わせる視覚的な効果を生み出します。ストラップにはトスカーナ産カーフレザーを採用し、フィレンツェを象徴する百合の紋章をホットスタンプ。PAM01734にはブラックレザーとグリーンラバー、PAM01794にはブラウンレザーとブラックラバーのスペアストラップを組み合わせています。歴史的な意匠と現代の使い勝手をひとつにまとめた仕立てが、2つの限定モデルの個性を際立たせています。
オフィチーネ パネライ
0120-18-7110
www.panerai.com
【Editor's View】
パネライはフィレンツェ本店の100周年を、店舗の歴史を振り返るだけの記念事業にせず、時計そのものへ落とし込んでいます。1960年代のプロトタイプに由来するディテールには、当時の装飾感よりも先に「どうすれば現場で確実に使えるか」という発想があります。リューズプロテクターの切り込みは、その象徴的な一例です。さらに「PANERAI FIRENZE」の刻印やトスカーナ産カーフレザー、フィレンツェの百合をあしらったストラップによって、場所の記憶も視覚的に重なります。歴史をそのまま保存するのではなく、機能として生まれた意匠を現代の時計へ再配置することで、フィレンツェとパネライの関係を現在進行形のものとして提示しているのが、この2作の面白さです。
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