2026.09.17
カテゴリ: コレクション
コーチ 創立85周年のSpring 2027 コレクションに、幾田りらをはじめ、KOHARU、福原遥、山中柔太郎らが来場
85年という時間は、過去を振り返るためだけの数字ではありません。コーチのSpring 2027 コレクションがニューヨーク・ダウンタウンから示したのは、積み重ねてきた記憶を現在のクリエイションへ変換し、さらにその先へ進むという姿勢です。ヴィンテージのレザーやデニムは新たな服へと姿を変え、裏側の構造はデザインとして表へ。アーカイブから着想を得たバッグには華やかな装飾が加わり、ショーの終盤には音楽とダンス、コミュニティがひとつになる祝祭が広がりました。85周年を彩ったのは、懐古ではなく、ニューヨークの精神を受け継ぎながら更新していく自由な発想です。

2027年9月10日、コーチはブランドのホームタウンであるニューヨーク・ダウンタウンでSpring 2027 コレクションを発表しました。創立85周年という節目に選んだのは、過去の記憶をそのまま再現することではなく、これまで培ってきたコードを現在の感覚で捉え直すアプローチ。端正なテーラリング、レザーのクラフト、ヴィンテージを思わせる素材感を軸に、新たな構造や遊びを加えたコレクションが展開されました。ブランドの原点であるニューヨークから、次の時代へ視線を向けたシーズンです。
今季を特徴づけるのは、異なる要素を一つの服の中で共存させる発想です。すっきりとしたシルエットや洗練されたテーラリングに、ヴィンテージライクな素材を組み合わせ、そこへ裏地や内部構造をあえて外側に見せるインサイドアウト仕様を取り入れました。豊かなレザーワークやパーティーを連想させるディテールも加わり、クラシックな仕立てに軽快さと高揚感をプラス。整然とした美しさの中へ、あえて未完成のような表情や遊びを残しています。
創立85周年をデザインへ落とし込むにあたり、クリエイティブ・ディレクターのスチュアート・ヴィヴァースが着目したのは「記憶」でした。ただし、アニバーサリーを理由に過去のスタイルを振り返るのではありません。長く親しまれてきたものが時間とともに変化することに目を向け、コーチらしいアイデアを別の角度から再構築しています。構造を隠すのではなく見せ、仕立てをより柔らかく整え、随所に85周年を祝うディテールを加える。その姿勢が、歴史を未来へつなぐ今季のデザインを支えています。
今季は、スチュアート・ヴィヴァースのクリエイションを象徴してきたアイテムが、新しいバランスで登場します。トレンチコート、レザージャケット、タキシード、バイアスカットドレス、ウエスタンブーツといったワードローブの核となるアイテムをベースに、ショルダーラインはすっきりと、袖は細身に整えました。その一方でパンツには足元へ自然なドレープをつくり、クラシカルなテーラリングに柔らかな動きを加えています。馴染みのあるアイテムだからこそ、シルエットの微細な変化が新鮮に映ります。
アウターウェアでは、衣服の内側にあるものを外へ反転させることで、仕立てそのものをデザインへ変えています。コート、ブレザー、トレンチコートに取り入れたインサイドアウト仕様によって、裏地や内部構造が表情の一部に。その構築的な要素に対して、柔らかなナッパレザーやガーメントダイ加工を施したジャージーを組み合わせ、着姿にリラックスしたニュアンスを添えました。さらに、コーチのレザーアイテムを思わせるキスロックポケットを取り入れ、現代的なデザインの中にブランドのクラフトの記憶を残しています。


バイアスカットドレスやスカートは、今季の素材使いを象徴する存在です。ライニング素材をはじめ、オーバーダイ加工を施したジョーゼット、デニム、ラメ、スパンコールまで、異なる質感を一つのワードローブへ取り込みました。切りっぱなしのエッジや表からは見えにくい裏側、装飾的なステッチをあえて残すことで、完成品だけでなく制作の痕跡までデザインとして見せています。ニットやクロシェのスリーブを組み合わせれば、着こなしにも変化を加えられる自由度の高い構成です。
色彩は、静かなニュートラルカラーから祝祭的な輝きへと広がります。ダブグレー、ソフトブラウン、ブラック、ホワイト、ナチュラルなレザーの色合いをベースに、ペリウィンクル、パウダーピンク、ミントグリーン、メタリックカラーを加えました。落ち着いたテーラリングやレザーと、淡い色彩や光を反射する素材を組み合わせることで、昼間の装いにも夜のシーンにも対応。85周年という華やかな節目を意識しながら、日常のワードローブとして成立する幅も持たせています。
85周年を祝うムードは、装飾にも具体的に表現されています。レザーにはゴールドとシルバーのメタリックフォイルを施し、バッグやシューズにはコンフェッティを添えました。グリッターやレッドのネイルポリッシュによる仕上げも加わり、均一な加工だけでは生まれない手仕事の表情を引き出しています。さらに、クラウン、パーティーハット、リボン、ギフトボックス、バースデーカードといったモチーフをレザーで表現。アニバーサリーを象徴する身近なものをクラフトへ置き換えることで、服や小物そのものが祝祭の断片になります。
もう一つの重要なテーマが、すでにある素材へ新たな役割を与えることです。ヴィンテージのレザーウェアやデニムは再構築され、過去の風合いを残しながら別の姿へと変化。さらにライニング素材も、テーラリングやドレス、トップス、パンツへと用途を変えています。素材を新しく用意することだけに頼らず、既存のものを解体し、組み直し、再びワードローブへ戻す。今季のものづくりでは、その過程そのものがデザインの一部として示されています。
バッグには、コーチが持つアーカイブを現在へつなぐ発想が凝縮されています。1970年のアーカイブデザインから着想を得た「Turnlock Tote(ターンロック トート)」には、コーチ初のリードデザイナーであるボニー・カシンが生み出したターンロック ハードウェアを採用。メタリックフォイルとコンフェッティの装飾によって、85周年らしい祝祭感を添えています。「Inside-Out Brooklyn(インサイドアウト ブルックリン)」はバッグの構築美を前面に出すデザインへ更新。「Tabby(タビー)」にはアニバーサリーの特別なディテールを施し、さらにヴィンテージのコーチのポーチを組み合わせた「Collage Tabby(コラージュ タビー)」へと展開しています。
足元では、1970年代のテニスシューズに着想を得た「Hudson Sneaker(ハドソン スニーカー)」と、柔らかなカーフレザーを使ったウエスタンブーツが存在感を放ちます。どちらもベースとなるクラシックな形を保ちながら、メタリック加工やコンフェッティ、グリッターによって異なる表情を獲得。スポーツの記憶を感じさせるスニーカーと、アメリカンスタイルを象徴するウエスタンブーツという異なる背景を持つフットウェアを、85周年の祝祭感という共通の視点でまとめています。
ジュエリーでは、光を受けてきらめくクリスタルが主役です。シャンデリアのプリズムやアールデコ様式の時計ケースから着想を得たクリスタルペンダントは、レザーコードと組み合わせることでネックレスチャームとして楽しめる仕様に。さらに、ギフトボックスに結ばれたリボンからイメージしたブローチもラインアップしました。大きなシルエットをつくる服だけではなく、胸元や襟元に添える小さなアクセサリーにも85周年の物語を忍ばせています。
コレクションの世界観は、ランウェイだけで完結しません。ショーにはさまざまなゲストが訪れ、日本からはコーチのグローバル アンバサダーである幾田りらをはじめ、KOHARU、福原遥、山中柔太郎らが来場しました。会場ではレザーで仕立てたメニューのような冊子を手にコレクションノートを眺め、スパークリングワインやタンカレー ジンを使った85周年記念カクテル「Coach 85」を楽しむ場面も。音楽はJohn Grantの「Marz」で始まり、MFSBの「Love Is the Message」へと続きました。1970年代のニューヨークのディスコカルチャーと結び付くこの楽曲が流れることで、ショーには当時の都市文化を受け継ぐような空気が加わっています。

フィナーレでは、ファッションショーそのものがコミュニティのための祝祭へと変わりました。ランウェイ後方のカーテンが開くと、ブロンクスの子どもたちに無償で音楽教育を提供する非営利団体「UpBeat NYC」の演奏がスタート。「Love Is the Message」に合わせてモデルが再びランウェイへ戻り、Arturo Lyonsがディレクションした8名のヴォーグダンサーも加わります。コンフェッティが舞う会場で、モデル、ミュージシャン、ダンサー、ゲストが一つの空間を共有し、パフォーマーは観客を「Coach Club 85」へ。85周年を記念するショーは、人が集まり、音楽やダンスを介してつながるニューヨークらしい祝祭へとつながりました。
All photos courtesy of Coach
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SHOW CREDITS:
STYLIST: OLIVIER RIZZO
SET DESIGNER: STEFAN BECKMAN
MUSIC: SENJAN JANSEN
CASTING: ASHLEY BROKAW
HAIR: GUIDO
MAKEUP: DAME PAT MCGRATH
NAILS: NAOMI YASUDA
LIGHTING DESIGN: NICK GRAY, RENEGADE DESIGN
LIGHTING PRODUCTION: 4WALL
AUDIO PRODUCTION: ADI WORLDWIDE
VIDEO: B LIVE
PHOTOGRAPHY: ISIDORE MONTAG
EXECUTIVE PRODUCTION, FASHION SERVICES & MEDIA RELATIONS: KCD
お問い合わせ
コーチ・カスタマーサービス・ジャパン
0120-556-750
www.coach.com
【Editor's View】
コーチのSpring 2027 コレクションを読み解く上で重要なのは、85周年という数字を過去への回帰ではなく、記憶を更新するための出発点として扱っていることです。コーチは1941年、ニューヨークで6人の職人によって創業したレザーグッズのハウスを原点とし、1962年にはボニー・カシンを初のリードデザイナーに迎え、レザーを軸にニューヨークの自由な空気を映すブランドへと発展してきました。現在もスチュアート・ヴィヴァースのもとで、クラフツマンシップと故郷ニューヨークをブランドの重要な軸に据えています。今回のコレクションでは、その歴史がアーカイブの復刻だけに閉じていません。内部構造を表へ出すインサイドアウト、ヴィンテージ素材の再構築、ボニー・カシンのターンロックを受け継ぐバッグ、さらに音楽とダンスを介したショーの演出まで、過去にある要素を別の形へ動かしています。85年の歴史を保存するのではなく、次の時間へ持ち運ぶ。この考え方こそが、今回のコーチらしさを最も端的に表しています。
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