2026.09.17
カテゴリ: 新作
ジェラルド・ジェンタ 新作「ジュネーブ ミニッツ・リピーター ゴールデン オブシディアン」音と光を宿す黄金色の造形
時計の複雑機構には、見て理解するものだけではなく、耳で味わうものがあります。ジェラルド・ジェンタが特別な思いを寄せたミニッツ・リピーターは、その代表格です。新作「ジュネーブ ミニッツ・リピーター ゴールデン オブシディアン」では、光の加減によってゴールドやブラウンの表情を変える天然のオブシディアンをダイアルに採用。彫刻的なイエローゴールドケースの内部には、音の響きを追求した手巻きキャリバーGG-002を収めました。視覚と聴覚、素材と機械、ヴィンテージの記憶と現代的な技術。そのすべてが、ひとつの時計の中で静かに結び付いています。


オブシディアンが奏でるジュネーブの音色
音を通して時刻を感じるミニッツ・リピーターは、機械式時計のなかでもひときわ情緒に訴えかける複雑機構です。ジュネーブ・ウォッチ・デイズで披露された「ジュネーブ ミニッツ·リピーター ゴールデン オブシディアン」は、その魅力をジェラルド·ジェンタらしい造形感覚とともに現代へ引き継ぐ新作です。前作「ジュネーブ ミニッツ·リピーター ブラック オニキス」に続き、今回はダイヤルの表情にも新たな素材を採用。精緻な機械構造と音による体験を一体として捉えながら、ハイウォッチメイキングにおけるメゾンの技術と美意識を示しています。
ジェラルド·ジェンタにとって、ミニッツ·リピーターは数ある複雑機構のなかでも特別な存在でした。時計デザインの可能性を広げるだけでなく、機械が生み出す音そのものを感情へとつなげられるからです。その製作を支えたのが、マスター·ウォッチメーカーのピエール=ミシェル·ゴレとの協業でした。卓越した時計製造の知識に加え、ゴレが持っていたオペラへの情熱も、チャイムの響きを追求するうえで重要な感性となりました。視覚だけでは捉えきれない音の魅力を時計に宿すという発想は、現在のジェラルド·ジェンタにも受け継がれています。
「ジュネーブ」という名称には、ブランドの原点と現在を結ぶ都市への思いが込められています。メゾンの物語が始まったのは1969年。その舞台となったジュネーブは、長い時計製造の伝統を育んできた土地でもあります。本コレクションは、そこに根付くキャビノティエ·ド·ジュネーブの遺産を背景に、ジェンタが「L’Esprit de Genève(ジュネーブのエスプリ)」と表現した精神を形にしています。そこには、精密な時計製造と、イタリア的な美意識という二つの異なる文化的要素が共存しています。
その融合は、ムーブメントやケースに明確に表れています。時計としての技術的精度やケースを構築する緻密さには、ジュネーブの伝統的なサヴォアフェールが息づいています。一方で、造形そのものは彫刻を思わせる柔らかな輪郭、丸みを帯びたプロポーション、そして特徴的なガドルーン装飾によって感情的な表情を獲得。合理性だけでは語れない美しさや楽しさを加えることで、機械式時計を身につけるためのアートへと引き上げています。精密さと装飾性を対立させず、一つの造形へまとめることが、このコレクションの個性です。
エレガンスと音色のためのデザイン

音響を増幅する
ヴィンテージウォッチを思わせる幾何学的なクッション型ケースは、構築的な骨格を持ちながら、角を丸めたような柔らかな表情を備えています。その特徴的な輪郭をつくるのが、滑らかに連なるガドルーン装飾です。40 mm径のケースにはイエローゴールド 3Nを採用し、彫刻的なフォルムに温かな色調を加えています。さらに、この素材はミニッツ·リピーターにとって視覚だけではない意味を持ちます。音を響かせるうえで優れた音響特性を備えるため、温かみと透明感のあるチャイムを引き出すケース素材として選ばれています。ケースそのものが、時計の音色を支える要素になっています。
ミニッツ·リピーターにおいて、ケースは単なる外装ではなく、音を届けるための重要な構造体です。そこで「ラ·ファブリク·デュ·タン ルイ·ヴィトン」のアーティスティック·ディレクター、マチュー·エジは、限られた内部空間の中でケースの寸法と厚みを細かく調整しました。厚さ9.60 mmのゴールド製ケースではケースウォールを薄く仕上げ、内部で生じたチャイムが明瞭に伝わるよう構造を設計。わずかな寸法差も音響に影響する複雑機構だからこそ、ケースの造形と音質を切り離さずに設計することが求められました。そこには、ジェラルド·ジェンタが追求してきた薄さと装着性へのこだわりも重なります。
共鳴を最大限に高める
音の響きを妨げる要素を可能な限り減らすため、ケース内部の構造にも細かな工夫が施されています。最も薄い部分はわずか0.6 mmまで削り、ベゼルとケースバックの内側には円形のドリル加工を施して、音が内部を通りやすい空間を確保。さらにベゼルとケースバックを直接ネジ留めすることでネジの数を半分に抑え、薄型構造としての剛性を保っています。ネジにもガイド(下穴)を設けない仕様を採用し、内部に不要な質量や障害物を残さない設計としました。サファイアクリスタルも通常の1.0 mmから0.8 mmへ薄型化。こうした細部の積み重ねによって、音響性能、薄さ、装着感という相反しやすい要素を一つのケースにまとめています。
ケース表面の仕上げには、サテンとポリッシュを交互に配することで、光の強弱が生まれるよう設計されています。とりわけポリッシュ仕上げのダブル·ガドルーンは、ジェラルド·ジェンタの歴史的な作品を想起させるディテール。その艶とサテン面のコントラストが、クッション型ケースの薄く流麗なプロポーションをより際立たせます。ミニッツ·リピーターのトリガーもケースの曲線に沿う薄型形状とし、指先で操作した際の触感まで考慮。新設計のラグとブラウンのカーフレザーストラップを組み合わせ、彫刻的なケースを手首へ自然になじませています。
唯一無二のダイアル
黒一色の硬質な表情とは異なり、「ジュネーブ ミニッツ・リピーター ゴールデン オブシディアン」のダイアルには、光の角度によって変化する温かな色彩があります。ゴールデン オブシディアンは、火山溶岩が急速に冷却されて形成される天然の火山ガラス。その暗い表面にはブラウンやほのかなゴールドの輝きが現れ、見る位置や光の当たり方によって異なる奥行きを感じさせます。自然が生み出した模様には一つとして同じものがなく、それぞれのタイムピースが固有の表情を持つことも、この素材を選ぶ大きな魅力です。
マチュー·エジが語るように、オブシディアンの魅力は個体ごとに異なることにあります。一般的なブラックオブシディアンとは異なるゴールドとブラウンのニュアンスが、今回のダイアルに独特の温度を与えています。その色調は3Nイエローゴールドのケースとも自然につながり、丸みを帯びたインデックスと針が石の表情を邪魔することなく時刻を示します。さらにホワイトで転写されたミニッツトラックは、内側では円形、外周ではクッション型ケースの輪郭に沿う構成に。視線の動きに応じてラウンドとクッションの二つの形が交差するような錯覚を生み、ダイアルそのものを立体的に見せています。精密機構を収める時計でありながら、天然素材が生む偶然性によって生命感を備えているのが本作の特徴です。
チャイムを一音ずつ生み出す
視線をダイアルから裏側へ移すと、そこにはもう一つの主役があります。「ラ·ファブリク·デュ·タン ルイ·ヴィトン」でマスター·メーカーのエンリコ·バルバシーニとミシェル·ナバスが手掛けた、完全自社開発の手巻きキャリバーGG-002です。オープンケースバックからその姿を眺められる設計によって、複雑機構を動かすための構造だけでなく、仕上げまで含めたムーブメントの存在感を楽しめます。表側の天然石と、裏側に広がる機械の美しさ。その両面が揃って初めて、本作の個性が完成します。
GG-002の設計思想を支えるのは、複雑機構を単なる技術的な到達点で終わらせないという考え方です。エンリコ·バルバシーニとミシェル·ナバスが語るように、ジェンタがミニッツ·リピーターへ求めたのは、機械として優れているだけではなく、音によって感情を動かすことでした。だからこそGG-002でも、精密なメカニズムと視覚的な美しさ、その先にある音の体験を一つのものとして設計しています。複雑機構を見せるための時計ではなく、作動させ、耳を澄ませることで完成する時計。その思想がムーブメント全体に通っています。
音を生み出すゴングは、完成した部品をそのまま組み込むのではありません。一つひとつを切り出し、耳と手で音を確かめながら調律し、理想的な振動振幅へと整えます。そこにブラックのポリッシュ仕上げを施したハンマーと、伝統的な1回転ゴング構造を組み合わせることで、澄んだチャイムが響く仕組みを構築しています。ミニッツ・リピーターでは、ケースやムーブメントの設計だけでなく、音そのものを最終段階まで人の感覚で追い込むことが重要です。視覚では捉えられない微細な違いを耳で確かめる工程が、本作の音色を形づくっています。
卓越したムーブメントの仕上げ
GG-002は、機能だけではなく仕上げにも手仕事の密度を感じさせます。オートオルロジュリーの基準に沿って全体を手作業で仕上げ、コート·ド·ジュネーブや手作業による面取り、全面のサーキュラーグレインを組み合わせました。テンプにはポリッシュ仕上げのゴールド製マスロットを備え、精密な調整と装飾性を兼ねた緩急調整システムを構築。さらに8角形の慣性ホイールには、ジェンタが好んだ幾何学的な造形へのオマージュを込めています。80時間のパワーリザーブとバークリック式の巻上げ機構まで含め、操作する時間そのものにも機械式時計ならではの奥行きを加えています。
「ジュネーブ ミニッツ・リピーター ゴールデン オブシディアン」は、ジェラルド・ジェンタが追求したミニッツ・リピーターという複雑機構を、素材、ケース、ムーブメント、音という複数の要素から捉え直した一本です。ゴールデン オブシディアンが持つ自然の揺らぎに、彫刻的なケースの曲線とイエローゴールドの温度感を重ね、裏側には音のために設計されたGG-002を搭載。ヴィンテージを想起させる造形を守りながら、その内部には現代の技術と手仕事を凝縮しています。時刻を示す道具から、見る、触れる、そして聴くことで完成する存在へ。そんなジェラルド・ジェンタならではの時計観が、この新作に静かに息づいています。
Technical Specifications
「ミニッツ·リピーター」
EBFE02A1

ケース
素材 イエローゴールド 3N
リューズ イエローゴールド、 ゴールデン オブシディアンカボション
ダイアル、針
ダイアル ゴールデン オブシディアン
直径 40 mm
厚さ 9.6 mm
インデックス イエローゴールド 3N (ポリッシュ&ラウンド仕上げ)
ミニッツ ホワイト転写
針 ゴールド – ポリッシュ&ラウンド仕上げ – アローチップ型
ムーブメント
キャリバー GG-002 - 自社製造、ミニッツ·リピーター、手巻き
パワーリザーブ、 80時間 - 3Hz.
振動数
直径 32.4 mm
厚さ 5.46 mm
部品数 – 石数 316 – 32個
ストラップ
ラグ幅 20–18 mm
素材 ブラウンカーフレザー
発売時期 2026年9月
価格 要問合せ
All photos courtesy of LOUIS VUITTON
ブランドやこれまでに発表されたコレクションについての情報は、公式サイトgeraldgenta.com、または公式インスタグラムアカウント @geraldgentaofficialをご参照ください。
#géraldgenta #ExtraordinaryGenta #MinuteRepeater
GenevaWatchDays
【Editor's View】
ミニッツ・リピーターの魅力は、複雑な機構を目で確認することだけではありません。時刻を告げる音がケースから立ち上がった瞬間に、時計との関係が視覚から聴覚へと切り替わります。「ジュネーブ ミニッツ・リピーター ゴールデン オブシディアン」は、その特性をダイアルの素材選びから考えている点が興味深い存在です。自然がつくったゴールデン オブシディアンの揺らぎと、人の手によって追い込まれたGG-002の音色は、一見すると対照的な要素。それをジェラルド・ジェンタらしいクッション型ケースの中で結び付けることで、精密さだけでは語れない時計の魅力を引き出しています。ジェラルド・ジェンタのデザインには、複雑機構を技術の誇示だけで終わらせず、造形そのものに感情を持たせる発想が根底にあります。本作ではその考え方が、天然石の偶然性と、ミニッツ・リピーターの音という二つの個性によって、より明確に感じられます。
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