2026.08.22
カテゴリ: 新作
ダンヒルのモータリング史を現代へ、1912年のアーカイブから生まれた「ドライビング ジャケット」
ダンヒルの服作りを理解するうえで、モータリングは装飾的なエピソードではありません。ブランドの創業期、アルフレッド・ダンヒルは自動車という新しい移動手段を取り巻く環境に目を向け、ドライバーを風雨や飛来物から守るための製品を生み出していました。そこでは実用性と同時に、ウェストエンドの熟練したカッターによる仕立ての技術も重要な役割を担っていました。「ヘリテージ・イン・モーション」第4章の「ドライビング ジャケット」は、1912年の一着を起点に、その二つの流れを現代のレザーウェアへ引き継いだものです。モータリングのための機能とテーラリングの感覚が、現在のダンヒルで再び交わります。
今回の「ヘリテージ・イン・モーション」第4章でダンヒルがたどるのは、ブランドの初期を支えたモータリングウェアの系譜です。その題材となる「ドライビング ジャケット」は、アルフレッド・ダンヒルが初期のモータリストのために開発したレザーウェアを、現代の素材と構造で捉え直したもの。着想源には、1912年の自社カタログ「Maturities for Motorcyclists」に掲載されたタンカラーのレザージャケットがあります。フランス産ラムスキン・プランジェを用い、メリノウールをライニングに施した一着です。
ダンヒルがレザーウェアに力を注いできた背景には、創業期のモータリング文化があります。1901年の「The Autocar」誌の広告では、アルフレッド・ダンヒルは「世界最大のレザーウェアメーカー」と称されました。さらに1905年の広告には、コンデュイット ストリートの店舗でアルフレッド自身が監督し、すべてのガーメントをウェストエンドの熟練したカッターが裁断していたことが記されています。風や雨、路面から飛んでくるものにさらされるドライバーやモーターサイクリストのための防護服に、精密な裁断と仕立ての技術を持ち込んだことが、当時のダンヒルのレザーウェアを特徴付けていました。
ダークブラウン レザー ドライビング ジャケット
その創業期の考え方は、新しい「ドライビング ジャケット」の細部にも読み取れます。1912年のアーカイブを思わせるのは、まずダークブラウンの色合いとシルエット、そして控えめなスタンドカラーです。さらに、ステッチの幅やホーンボタンの大きさ、その配置にも当時のガーメントから得た着想が反映されています。パッチポケットはモータリングウェアが備えていた機能性を受け継ぎながら、全体の仕立ては柔らかくクリーン。レザージャケットでありながら、テーラードジャケットとアウターウェアの間に位置するようなバランスに整えられています。
初期のダンヒルにおけるモータリング製品は、厳しい走行環境に対応するための発明だけではありませんでした。1903年に発表された「ボビー・ファインダー・ゴーグル」は、初期ダンヒルの「モートリティーズ」コレクションの一部で、エドワード朝時代のドライバーが半マイル先の警官を「たとえ立派な紳士に扮していても」見つけられるよう考えられたものです。アルフレッド・ダンヒル自身も、この時代にスピード違反で止められた経験があったとされます。実用性を追求しながら、その発想には時代を映す遊び心も共存していました。
「ドライビング ジャケット」はイタリアで製造され、軽やかな構造としなやかな仕立てによって、身体を包むレザーの存在感を保ちながらも堅い印象を抑えています。ここにあるのは、歴史的なモータリングウェアをそのまま再現するという発想ではなく、実用性と仕立ての双方を現在の着用感へつなげるアプローチです。サヴィル・ロウの規律を背景に培われてきたダンヒルのレザーウェアの専門性を、創業期から続くモータリングの記憶とともに表現した一着です。
ダンヒル / dunhill
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【Editor's View】
ダンヒルのモータリングにまつわる歴史を振り返ると、現在のレザーウェアは過去の意匠を引用するためだけに存在しているわけではないことが見えてきます。創業期の製品には、風雨や飛来物から身を守るという明確な目的があり、その一方で、コンデュイット ストリートの店舗とウェストエンドの熟練したカッターが支える仕立ての技術がありました。「ドライビング ジャケット」は、1912年のアーカイブからスタンドカラーやボタン、ステッチといった具体的な要素を拾い上げながら、軽やかな構造へと置き換えています。アーカイブの再現ではなく、ダンヒルがモータリングとテーラリングを結び付けてきた理由を、現在の一着として読み替えた点にこのキャンペーンの意味があります。
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