Héritage L.Vuitton

⑥王侯貴族の支持から新興の旅行者層へ


ルイ・ヴィトンのトランクは、その高い品質と実用性から、フランス皇后ウジェニーをはじめとする王侯貴族に愛用されるようになった。ウジェニーはナポレオン3世の皇后であり、流行を牽引する存在であった。彼女の支持を得たことで、ルイ・ヴィトンの名は一躍広まり、宮廷をはじめとする富裕層の顧客が急増した。

フランス皇后ウジェニー
フランツ・クサヴァー・ヴィンターハルター:宮廷衣装を着た皇后ウジェニーの肖像(1853年頃)

また、ルイは顧客の要望に応じてオーダーメイドのトランクを製作し、貴族たちの個別のニーズに応えた。例えば、香水瓶を安全に収納できる専用の仕切りや、ドレスがしわにならないよう設計された特製トランクなど、顧客のライフスタイルに寄り添った製品を次々と開発した。

19世紀の終わりには、鉄道や蒸気船の発達により中産階級の間でも旅行が一般化した。これに伴い、ルイ・ヴィトンは新たな顧客層にも対応すべく、実用性とエレガンスを兼ね備えたトランクを次々と発表。王侯貴族のみにとどまらず、新興の旅行者層にもブランドの魅力を広げていった。

こうして、ルイ・ヴィトンのトランクは単なる荷物運搬の道具ではなく、「旅の芸術」としての地位を確立していった。19世紀の終わりには、ヨーロッパだけでなく、アメリカやアジアの富裕層にもその名が知られるようになり、ブランドとしての基盤が築かれた。

この成功を支えたのは、ルイ・ヴィトンの「旅をより快適に、より美しくする」という哲学だった。王侯貴族に愛されるブランドとしての地位を確立したルイ・ヴィトンは、その精神を次世代へと受け継ぎ、さらなる革新へと歩みを進めていくのである。

     

STORY

  • ルイ・ヴィトン200年の物語
  • Héritage(エリタージュ)LV

このコラムについて

この、Héritage(エリタージュ)L.Vuittonのコラムでは、14歳で故郷を旅立った少年、ルイ・ヴィトンの夢が世界を魅了するまでの、200年のストーリーをたどります。

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