2026.09.29
カテゴリ: 新作
ルイ・ヴィトン「モントレー セラミック」、セラミックケースとマットラッカーダイアルで更新された1988年のウォッチデザイン
1988年に登場した「LV I」「LV II」の造形を受け継ぎ、ルイ·ヴィトンの「モントレー」がセラミックという現代的な素材を纏って新たな姿を見せます。グリーン、そしてブラック&ホワイトという2つのカラーに、マットラッカーのダイアルや鮮やかな針の色を組み合わせ、ペブルシェイプのケースをグラフィカルに引き立てた新作。さらに、ケースを形づくるセラミックの成形や焼成、手作業による研磨、ダイアルの色調を追い込む工程、自社製自動巻きムーブメントの装飾まで、「ラ·ファブリク·デュ·タン ルイ·ヴィトン」の技術が細部に行き渡っています。過去のアイコンを保存するのではなく、素材と機構の両面から現在の時計へ更新したコレクションです。
1988年に誕生した「LV I」「LV II」のデザインを受け継ぎ、2025年にはイエローゴールド製のリミテッドエディションとして再登場した「ルイ·ヴィトン モントレー」。その歩みをさらに前へ進める2つの新作が、このたびパーマネント·コレクションに加わります。今回登場するのは、セラミックを纏ったモデル。過去のアイコンを現在のウォッチメイキングへつなぎながら、「ルイ·ヴィトン モントレー」ならではの個性的な存在感を、より長く楽しめるコレクションとして展開します。
新作「ルイ·ヴィトン モントレー セラミック」は、1988年の「LV II」に宿る造形を出発点に、グリーンとブラック、2色の最先端セラミックで現代的に再構築されています。丸みを帯びたペブル(小石)シェイプのケースは、その愛嬌あるフォルムを残しながら、ひと目で印象に残る大胆さを獲得。そこへ1980年代のオリジナルを想起させるグラフィカルな意匠と、ひねりの効いた表現を重ねることで、遊び心と前衛性が共存するタイムピースへと仕上げています。素材の扱いには「ラ·ファブリク·デュ·タン ルイ·ヴィトン」が培ってきた技術が生かされ、過去のデザインコードを現在の感覚へと更新しています。
「LV I」と「LV II」が生まれたのは1988年。ルイ·ヴィトンが初めて腕時計を手がけるにあたり協働したのが、イタリア人建築家兼デザイナーのガエ·アウレンティでした。建築や家具、照明、オブジェまで幅広い領域で才能を発揮した彼女は、パリの駅舎をオルセー美術館へ転換したプロジェクトでも知られています。その創造性を時計へ持ち込み、旅を起点とするメゾンの精神と自らの造形感覚を融合。丸みを帯びたペブルシェイプのケースや、12時位置に置かれたリューズという独特の構成が、従来の腕時計とは異なる個性を生み出しました。やがて愛好家たちは、フランス語で「時計」を意味する「モントル」に親しみを込めた呼び名を与え、それが「モントレー」という現在の名称へつながっています。
オリジナルの「LV I」「LV II」は、近年ヴィンテージウォッチとしても改めて注目を集めています。コレクターの間で関心が高まり、オークションにも登場するほか、世界のトレンドセッターやファッションアイコンが身につける姿も見られました。さらにニコラ·ジェスキエールによるウィメンズ·コレクションのショーでは、「LV II」が2025秋冬ショーで、「LV I」が続く2026春夏ショーでスタイリングに取り入れられ、ペンダントやベルトとしても存在感を発揮しています。腕時計という本来の用途を越えて装いの一部として機能する柔軟性が、このデザインに備わる魅力をあらためて印象づけました。2025年に発表されたイエローゴールド製「ルイ·ヴィトン モントレー」の限定モデルも、その系譜に新たな一章を加えています。
時を経ても「LV I」と「LV II」が支持されてきた背景には、機能だけでは捉えきれない造形の強さがあります。ケースは手首を囲む一般的な時計とは異なり、滑らかなペブルシェイプによってひとつのオブジェのような輪郭を形成。クローズドケースバックとグラフィカルなダイアルを組み合わせることで、身につける道具でありながら、視線を引きつける造形物としての性格も備えています。過去の時計でありながら古さだけに寄りかからない、その大胆なフォルムこそが、デザインやアートを愛する人々を惹きつけてきた理由のひとつです。
ガエ·アウレンティによる1988年のデザインを現代へつなぐうえで、ルイ·ヴィトンが維持したのは象徴的なグラフィックコードです。レイルウェイミニッツとアワートラック、半円を描く「LOUIS VUITTON PARIS」のレタリング、視認性の高いシリンジハンド、そして12時位置に据えたクル·ド·パリ装飾のリューズ。新作ではこのリューズをスティール製とすることで、オリジナルの特徴を保ちながら素材感を現代的に整えています。過去の造形をそのまま保存するのではなく、1988年の個性を残しつつ、腕元以外のスタイリングにも取り入れられる汎用性へと広げている点も、今回の再解釈を特徴づけています。
セラミックによる再解釈
「ルイ·ヴィトン モントレー セラミック」の魅力は、1988年の大胆なデザインを受け継ぐだけではありません。その造形を現代のタイムピースとして成立させるため、「ラ·ファブリク·デュ·タン ルイ·ヴィトン」が培ってきたウォッチメイキングのサヴォアフェールが細部に注ぎ込まれています。セラミックという現代的な素材と、過去から受け継いだ特徴的なフォルム。その組み合わせによって、ヴィンテージの記憶を残しながらも、現在の腕元に自然に置くことのできる新しい「ルイ·ヴィトン モントレー」が形づくられています。
「ルイ·ヴィトン モントレー セラミック」は、2つのカラーで異なる表情を描き出します。ひとつは、グリーンのセラミックケースとダイアルを揃えたトーン·オン·トーンのモデル。そこへ、ルイ·ヴィトンのレザーグッズを象徴するイエローのステッチを思わせる、鮮やかなイエローラッカー仕上げの針を差し込みました。同系色でまとめたケースと文字盤に強いコントラストを加えることで、ペブルシェイプの造形がより際立ち、コンテンポラリーでエッジの効いたキャラクターが浮かび上がります。
もうひとつは、ブラックとホワイトを基調としたシャープなモデルです。光沢のあるブラックセラミックのケースにマットホワイトのラッカーダイアルを組み合わせ、レッドの針とレイルトラックをアクセントとして配置。ポリッシュ仕上げのケースは光を受ける角度によってガンメタルから深いブラックへと色調を変え、滑らかな曲面に豊かな表情を与えます。ブラックのグレインカーフレザーストラップにはダイアルと呼応するレッドステッチを施し、全体にスポーティな緊張感をプラス。ミニマルな構成のなかにグラフィック性と1988年の「LV II」を思わせるヴィンテージのコードを凝縮した、コレクターの視線を引きつける仕上がりです。
2つのモデルに共通するケース径は、オリジナルと同じ37mmです。一方で厚さは11mmとなり、1988年モデルから2mm増加。これは、当時のクオーツムーブメントから、自社製の自動巻きムーブメントLFT MA01.02へと変更されたことによるものです。表示機能は時・分・秒に絞り、オリジナルに備わっていたデイト表示とアラーム機能を省きました。ダイアルもまた、情報を整理したミニマルな構成とし、昨年発表された188本限定の、グラン·フー エナメルのダイアルを備えた「LV I」の再解釈とも呼応する、抑制の効いたデザインに仕上げています。
今回、パーマネント·コレクションに加わる2つのセラミックモデルでは、マットラッカー仕上げのダイアルがそれぞれのカラーを鮮明に映し出します。グリーンとブラック&ホワイトという対照的な配色に加え、針やレイルトラックなどの細部にも異なる色彩を取り入れることで、同じ「ルイ·ヴィトン モントレー」でありながら個性の異なる表情を構築。素材の選択だけでなく、カラーリングや仕上げにおいても、現代的なウォッチメイキングのサヴォアフェールが注ぎ込まれています。
サヴォアフェールが導く新たな高み
「ルイ·ヴィトン モントレー」を新たな時代へつなぐために、「ラ·ファブリク·デュ·タン ルイ·ヴィトン」が向き合ったのは、1988年のデザインを残すことだけではありません。現代の素材を採り入れながら、その特徴的なフォルムとグラフィックを成立させるための技術を磨き上げました。過去の意匠と新しい素材、デザインと機械式時計の技術をひとつに束ねることで、オリジナルの記憶を持ちながら現在のウォッチとして機能する、新しい「モントレー」が形づくられています。
素材を極める
なかでも大きな挑戦となったのが、ケースに採用されたセラミックの扱いです。堅牢性や耐摩耗性、耐食性に加え、非磁性、化学的安定性、生体適合性を備える一方、加工には高度な技術を要する素材。光沢のある仕上げは光を受け止めながら、ペブルシェイプの曲線や彫刻的な立体感を際立たせます。とりわけルイ·ヴィトンのヘリテージを想起させるグリーンの色調を実現するには、多くの試作と検証を重ね、狙った色合いへ近づける工程が必要でした。さらにケースそのものも精密に加工することで、セラミックならではの軽さと快適な装着感を引き出しています。
セラミックケースを完成させるまでには、素材を形にする段階から精密な工程が続きます。ルイ·ヴィトンでは、一般的な成形方法とは異なり、まずセラミックパウダーを起点として酸化ジルコニウムに顔料を加え、振動と圧縮によって緻密な固形の棒状へと成形。そのセラミック原材ブロックを3軸加工機で削り出し、独特のペブルシェイプへと仕上げます。複雑な曲面を持つケースだからこそ、素材の特性を理解しながら加工精度を追求することが不可欠。1988年から続く特徴的な輪郭を、現代のセラミックで忠実に成立させるための技術が、この工程に凝縮されています。
セラミックをペブルシェイプへと削り出した後も、ケース完成までにはさらに慎重な工程が続きます。形状を整えたケースは1,000℃を超える高温で焼成され、狙ったグリーンやブラックの色調へと仕上げられます。ただし、この工程では素材が収縮し、寸法も変化します。そのため、焼成後に正確なサイズへ到達できるよう、あらかじめ変化量を見極めて加工精度を調整することが欠かせません。複雑な曲面を持つ「モントレー」では、こうした工程の予測と管理そのものが完成度を左右します。
焼成を終えたセラミックは機械加工ができないため、仕上げは熟練した職人の手へ委ねられます。専用の研磨機で少しずつ状態を確認しながら調整と再調整を重ね、わずかな力加減の違いによる欠損や破損を避けながら輪郭を整えていきます。最終段階では手作業で磨きをかけることで、ケース特有の滑らかな曲線と鏡面のような光沢を引き出します。素材の硬さと繊細な形状を同時に扱うからこそ、ここでは機械だけに頼らない職人の判断と精度が求められます。
ダイアルのグラフィックアイデンティティを形づくる
文字盤にも、色彩と仕上げを突き詰めるための細かな工程が積み重ねられています。ラッカー仕上げは歴史的なモデルを想起させる表現で、とりわけグリーンでは理想の色調に到達するまで顔料の配合を研究し、4週間にわたって試作とテストを実施。グリーンとホワイトのダイアルはいずれもスプレーガンで2層から3層を重ね、色の深みとニュアンスを整えています。さらに針やミニッツトラックも細かく色を合わせ、グリーンのモデルにはイエローの針とホワイトのミニッツトラック、ブラックのモデルにはレッドのアクセントと繊細なブルーの秒針を組み合わせました。こうした色の配置が、シンプルなダイアルに鮮明なグラフィック性を与えています。
狙った色味が整った後は、マットなワニスを重ねて表面を仕上げます。光をそのまま反射させるのではなく拡散させることで、ラッカーならではの色の奥行きや豊かなニュアンスを保ちながら、落ち着いた均一な質感へと導きます。このワニスの塗布も機械任せではなく、全面的に手作業で行われる工程です。鮮やかさと静けさを同時に備えたダイアルの表情は、こうした繊細な仕上げの積み重ねから生まれています。
ダイアルの最終工程を担うのがアクリルスタンピングです。複雑なパターンと必要な立体感を正確に表現するため、まず職人が機械を細かく調整し、理想の仕上がりに合わせて設定を詰めていきます。グリーンのモデルはホワイトのインジケーターに1回、ブラックのモデルはレッドとブラックの表現のために2回スタンピングを実施。さらにミニッツトラック、「LOUIS VUITTON PARIS」、「FAB. EN SWISSE」のシグネチャーも施されます。各工程の後には80℃で1時間の焼成を行い、スタンピングと焼成のいずれも破損すれば最初からやり直す必要があるため、一連の作業には高い集中力と精密さが求められます。
自社製ムーブメント:秘められた卓越性をかたちに
外からは見えないムーブメントにも、仕上げへのこだわりが行き届いています。クローズドケースバックの下に収まる自動巻きムーブメントLFT MA01.02には、時計師が整備時に目にする内部まで専門的な装飾を施しました。地板には円形のグレイン模様、ブリッジにはサンドブラスト加工と縁のマイクロサンドブラスト仕上げを採用。さらに、クラシックなルビーに代えて無色のサファイアを用い、各パーツにもルイ·ヴィトンのデザインコードを加えています。18Kローズゴールド製ローターにはV字型のノッチとポリッシュ仕上げの外周、モノグラムの刻印を施し、香箱のすぐ下には「LFT」の刻印を配置。これは「ラ·ファブリク·デュ·タン ルイ·ヴィトン」のメーカーズマークです。
「ルイ·ヴィトン モントレー セラミック」は、1980年代の「LV II」が持っていた大胆なフォルムとグラフィカルな個性を残しながら、素材、色、ムーブメント、仕上げのすべてを現代のウォッチメイキングへと置き換えた新作です。グリーンとブラックを軸にした2つのモデルには、セラミックの成形からケースの研磨、ダイアルの調色とスタンピング、そして内部のムーブメント装飾まで、多くの工程で職人の技術が注ぎ込まれています。デザインの記憶を保ちながら、現在の素材と技術によって新たな輪郭を与えられた「モントレー」。1988年から続くアイコンに、またひとつ現代的な章が加わりました。

「ルイ·ヴィトン モントレー オトマティック ブラック セラミック」
W0CR11
価格:3,729,000円(税込)
ケース
•12時位置にクル·ド·パリ装飾を施したスティール製リューズを備えた、
ポリッシュ仕上げのブラックセラミックケース
• ケース径:37 mm
• 厚さ:11 mm
• クローズドケースバック
• 反射防止コーティングされたサファイアクリスタル
• 防水:30 m
ダイアル
• ホワイトラッカーダイアル
• レッドラッカーを施した真鍮製時分針、ブルーラッカーを施した真鍮製秒針
ムーブメント
• キャリバーLFT MA01.02:自社製自動巻き機械式ムーブメント
• 機能:時、分、秒
• 18Kローズゴールド製ローター
• 部品数:174
• パワーリザーブ:45時間
• 振動数:28,800回 / 時
• 石数:26
ストラップ
• レッドのステッチを施したブラックカーフレザーストラップ
バックル
• LOUIS VUITTONのシグネチャーが刻印されたスティール製のピンバックル

「ルイ·ヴィトン モントレー オトマティック グリーン セラミック」
W0CR21
価格:3,729,000円(税込)
ケース
• 12時位置にクル·ド·パリ装飾を施したスティール製リューズを備えた、
ポリッシュ仕上げのグリーンセラミックケース
• ケース径:37 mm
• 厚さ:11 mm
• クローズドケースバック
• 反射防止コーティングされたサファイアクリスタル
• 防水:30 m
ダイアル
• グリーンラッカーダイアル
• イエローラッカーを施した真鍮製時分針、ブルーラッカーを施した真鍮製秒針
ムーブメント
• キャリバーLFT MA01.02:自社製自動巻き機械式ムーブメント
• 機能:時、分、秒
• 18Kローズゴールド製ローター
• 部品数:174
• パワーリザーブ:45時間
• 振動数:28,800回 / 時
• 石数:26
ストラップ
• トーン·オン·トーンのハンドステッチを施したグリーンカーフレザーストラップ
バックル
• LOUIS VUITTONのシグネチャーが刻印されたスティール製のピンバックル
All photos courtesy of LOUIS VUITTON
詳細は、ルイ·ヴィトン 公式サイトhttps://www.louisvuitton.com をご覧ください。
【Editor's View】
今回の「ルイ·ヴィトン モントレー セラミック」を見るうえで鍵になるのは、復刻という言葉だけでは捉えきれない、素材と製造技術の更新です。1988年の「LV II」が持っていた特徴的なペブルシェイプを残しながら、セラミックを自社のウォッチメイキングへ取り込むことで、ケースそのものが新しい表現の場になっています。とりわけグリーンの色調を実現するための試作、1,000℃を超える焼成を前提とした寸法管理、焼成後の手作業による研磨は、ひとつのケースが完成するまでに必要な判断の多さを物語ります。ダイアルでも同じ姿勢が見られ、顔料の研究から複数層の塗装、マットなワニス、アクリルスタンピング、焼成まで、色と質感を段階的につくり上げています。一方で、ムーブメントにはLFT MA01.02を搭載し、見えない部分にも装飾を施すことで、デザインと機構を別々に扱っていません。1988年の大胆さをそのまま懐古的に見せるのではなく、セラミックや自社製自動巻きムーブメントという現在の技術で再構成する。その方法論こそが、この新作をルイ·ヴィトンらしいデザインウォッチとして成立させています。
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