2025.10.26
カテゴリ: コレクション
フェラガモ FERRAGAMO 2026年春夏コレクション、1920年代の自由な精神を現代的に再解釈
フェラガモが見せたのは、記憶と未来をつなぐ新たなエレガンスの形。2026年春夏コレクションでマクシミリアン・デイヴィスが取り組んだのは、1920年代にメゾンが生まれた時代への回帰でした。アーカイブから見出した文化の断片を、現代の感性で再構築。大胆なアニマルプリントやプロンジェレザーのジュエリー、そしてスピークイージーを思わせるドレスが、自由と再生の美学を語ります。1920年代の女性たちが纏った“解放”のスピリットは、デイヴィスの手によって再び息を吹き返し、フェラガモの未来へと受け継がれています。

フェラガモが発表した2026年春夏コレクションでは、クリエイティブ・ディレクターのマクシミリアン・デイヴィスが1920年代という原点に立ち返り、メゾン創設期の精神を再構築しました。当時の多様な文化や感性を融合させたエクレクティックな時代性を現代的に再解釈し、フェラガモの歴史に新たなページを刻んでいます。デイヴィスが追求したのは、過去のアーカイブに潜む革新性を今の感覚で呼び覚ますこと。その試みは、クラシシズムとモダニティが交差する独自のスタイルとして具現化されています。
今回のコレクションの出発点となったのは、フェラガモのアーカイブに残る1925年の一枚の写真でした。サイレント映画のスター、ローラ・トッドがレオパード柄を全身にまとったその姿は、ジャズ・エイジにおける“アフリカーナ”ムーブメントを象徴しています。この写真が、デイヴィスにとって異文化からの影響やエキゾチックな素材への探求心を掻き立て、デザインの根幹を形づくるインスピレーションとなりました。「素材やプリントがどのようにしてアフリカやカリブ海からアメリカ、そしてヨーロッパへと伝わり、ステータスシンボルへと変化していったのかに強い関心があった」と、デイヴィスは語ります。単に視覚的な美しさだけでなく、そこに宿る文化的な意味や背景を読み解く姿勢が、コレクション全体の知的な奥行きを生み出しています。
シルクやサテンに描かれた大胆なアニマルパターン、ジュエリーのように輝くプロンジェレザー、そして動きを印象づけるフリンジの装飾など、1920年代のエネルギーがモダンな感性とともに息づいています。スピークイージーの雰囲気を漂わせるスーツや、レースをあしらったスリップドレス、ドロップウエストや低いバックラインが特徴のドレスは、当時の自由な精神を今日的なエレガンスとして再構築しています。「1920年代の女性たちは新しい自分たちの肖像を描き出していた。それは自由を表現する行為であり、同時に自らの存在を再確認する瞬間でもあった」とデイヴィスは語ります。社会的制約から解き放たれ、個性を主張し始めた女性像を現代の視点で再提示することで、フェラガモは“エンパワーメント”をテーマとした新しいフェミニティの形を提示しています。
メンズウェアでは、ハーレム・ルネサンスに影響を受けたズートスーツが登場し、緩やかで表情豊かなダンディズムを表現。ネクタイをタキシードのウエストに巻くサッシュや、ドレスのパネルとして取り入れるといった大胆なスタイリングも印象的です。ジェンダーを横断するデザインの提案は、伝統的な男性像への再解釈ともいえ、クラシックと革新の両面からフェラガモの進化を体現しています。当時のイラストに見られるグラフィック主義や、カラーブロッキングの感覚が今季のアクセントとして再現されています。鮮やかなパテントレザー、象徴的なガンチーニのファスナー、繊細なファインゲージニットなどにそのエッセンスが息づいています。さらに、シルククレープに咲くフローラルオーナメントがアーカイブから再構築され、時代を超えた洗練として蘇りました。ノスタルジックでありながら新しい表情を纏うこれらの要素は、フェラガモが培ってきた職人技の進化を感じさせます。
フットウェアでは、過去の“Fスタイル”を受け継ぎながら刷新した“Sヒール”が新たな主役として登場しました。創業者サルヴァトーレが生み出した「Kimo」サンダルを思わせるケージ状のレザーパンプスをはじめ、足首を繊細に囲むガンチーニチェーンのポインテッドトゥパンプス、ローカットヴァンプのシューズなど、造形の美しさと官能性が共存します。構築的でありながら軽やかなフォルムは、フェラガモのDNAである機能と芸術の融合を体現しています。
サテンで仕上げたブドワール風のミュールには、咲き誇る花のようなビーズ刺繍があしらわれ、ストラップが足を優雅に包み込むように巻き付けられています。アーカイブのシューズに着想を得たメンズのダービーシューズは、クラシックなエッセンスを保ちながらも、シャープで現代的なラインへと再構築されています。レザーのスリッポンやサンダルには軽やかさが漂い、エフォートレスな上質感を添えます。これらのデザインは、フェラガモの美学が性別を超えて響き合うことを証明しています。
アクセサリーでは、ブランドを象徴する“HUG”バッグが今季の主役に。スカーフの流動的な動きに着想を得たショルダーバッグとともに、パテントレザー、編み込みレザー、型押しクロコ、ヌバックスエードなど、多彩な素材で登場します。ゴールドのガンチーニが輝くリストバッグはアーカイブをもとに再構築され、フェザーを纏ったバッグには軽やかな動きが加わり、エレガンスと遊び心を兼ね備えた仕上がりに。フェラガモらしいクラフツマンシップの真髄が、細部にまで息づいています。
メンズアクセサリーにもその精神は受け継がれ、精緻な編み込みレザーが“HUG”バッグやセイラーバッグに施されています。職人の手仕事が織りなす立体的なパネルが、クラシックなフォルムに深みを与え、フェラガモの伝統と革新を象徴します。機能性と造形美を両立させたこのシリーズは、ジェンダーを問わず現代のライフスタイルに寄り添う新しいアイコンとして位置づけられます。
【Editor's View】
フェラガモの2026年春夏コレクションは、マクシミリアン・デイヴィスが描く“文化と時代の再編集”の集大成といえます。アーカイブの再構築にとどまらず、女性の自由、男性のダンディズム、そして職人技の未来を一つのビジョンとして結びつけました。Sヒールやフェザーの装飾など、細部の造形に宿るエネルギーは、フェラガモがこれから示すモードの新方向を示唆しています。過去と未来の対話を通じて進化するブランドの姿勢が、このコレクション全体を貫いています。
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