2026.10.13
カテゴリ: コレクション
ルイ・ヴィトン 2027春夏ウィメンズ、身体を起点に再構築した軽やかなテーラリングと新しいシルエット
衣服を身体に合わせるのではなく、身体の動きから衣服を考える。ルイ・ヴィトンの2027春夏ウィメンズ・コレクションでは、ニコラ・ジェスキエールが「エルゴノミクス(人間工学)」をデザインの出発点に据えました。パリのルーヴル美術館クール・カレで発表された最新コレクションには、超軽量の素材や流動的なカッティング、身体に沿って形を変えるようなシルエットが登場。旅を快適にする機能性と軽やかさというメゾンのヘリテージとも呼応しながら、衣服を「第二の皮膚」として捉え直しています。静かな空間を軽やかに動くモデルたちの姿まで含め、身体そのものを主役に据えたコレクションです。
ルイ・ヴィトンは2026年10月6日、パリのルーヴル美術館クール・カレにて、ウィメンズ アーティスティック・ディレクター、ニコラ・ジェスキエールによる2027春夏ウィメンズ・コレクションを発表しました。日本時間では10月7日午前1時30分にあたる今回のショーで中心となったのは、身体と衣服の関係を捉え直す「エルゴノミクス(人間工学)」という考え方です。身体が本来持つ動きや能力を起点に衣服を設計することで、物体としての服、着る身体、そしてその動作の間にある自然な調和を探っています。ニコラ・ジェスキエールが長年取り組んできた未来的な感性も、今回は身体から離れた概念ではなく、日常の動きに寄り添うデザインへと結びつけられています。
今回のコレクションで興味深いのは、最先端のデザイン思想が、ルイ・ヴィトンが長く培ってきたヘリテージともつながっていることです。メゾンが旅のためのプロダクトづくりから発展させてきたのは、移動を快適にする機能性と、軽やかに扱えるフォルムの両立。その考え方は、身体の自由な動きを優先する今回のエルゴノミックなアプローチにも重なります。軽さは見た目の印象だけではなく、動きやすさという実用性にも関わる要素です。過去から受け継がれてきた旅の思想を、現代の身体感覚に合わせて衣服へ置き換えることで、メゾンの歴史と新しいデザインの方向性がひとつの線上に結ばれています。
身体を中心に据えた今回の考え方では、衣服の外側にあるシルエットだけがデザインの出発点になるわけではありません。むしろ内側にある身体のラインを捉え、その動きに合わせて衣服そのものが変化する構造が重視されています。あらかじめ決められた形を身体にはめ込むのではなく、曲線や可動域に沿って素材や構造が追従することで、服は「第二の皮膚」のような役割を担います。静止した状態だけを基準にするのではなく、歩く、腕を動かす、身体をひねるといった行為まで含めて衣服を考えることで、一着一着に流動性が生まれます。その結果として、軽量でありながら身体の動きを視覚的にも引き立てる、新しいフィジカリティが形になっています。
コレクションのシルエットには確かな構造が残されている一方で、そこから不要なこわばりが取り除かれています。素材は身体の動きに合わせてしなやかに変化し、衣服の形も着る人の動作によって異なる表情を見せます。ニコラ・ジェスキエールは、身体を単に衣服の内側に収める対象としてではなく、衣服の形を決定する要素として捉えています。そのため、直線や曲線といった外形だけでデザインを説明するのではなく、解剖学的な身体のラインに沿って服そのものを設計。動きに応じて変化するフォルムが、身体の存在感を自然に浮かび上がらせます。あらかじめ完成された輪郭を保つことよりも、着る人とともに形を変えていくことが、今回のワードローブの特徴です。
一見すると簡潔に見えるルックにも、身体との関係を緻密に設計した構造が隠されています。軽やかさやシンプルさ、着用時の心地よさを表面だけで表現するのではなく、複数の面や素材の張力によって立体的なフォルムを構築。身体の内部にあるラインまで想起させるようなシルエットへと仕上げています。ファブリックやレザーは身体に沿って馴染み、外観の美しさだけでなく、着用時の感覚や機能性まで含めて衣服の一部となります。ルイ・ヴィトンが今回提示した「第二の皮膚」という発想は、身体を隠すための服から一歩進み、動く身体そのものを美しく見せるための衣服という考え方につながっています。
素材の選択も、今回の軽やかなワードローブを形づくる重要な要素です。重力から解放されたような超軽量の革新的素材をはじめ、二重、三重に重ねたコンポジット・シフォン、カレ・シルク、シルクやカシミアのスカーフ素材などをさまざまなアイテムへ採用。伝統的なテーラリングも、その構造を内側から見直すことで、余分な重さや硬さを削ぎ落としています。ニットは身体のラインに沿ってシルエットを整え、フットウェアは軽量な衣服全体の印象を足元から引き締める役割を担います。素材、構造、シューズまでをひとつの身体感覚として捉えることで、軽さそのものをデザインへと昇華しています。
素材と構造の軽量化は、今回のコレクションを象徴する要素のひとつです。超軽量素材に加えて、重なりを持たせたコンポジット・シフォン、カレ・シルク、シルクやカシミアのスカーフ素材が、衣服のさまざまな部分へ取り入れられています。特にテーラリングでは、従来の美しい構築性を残しながら、内側の構造を取り除くことでより軽やかな仕上がりへと再構築。ニットは身体の輪郭を引き立て、フットウェアはその上に重ねられた軽いシルエットを確かな足取りへとつなげます。伝統を捨てるのではなく、必要な要素だけを残して構造を見直すことで、メゾンらしい仕立てに新しい可動性を与えています。
ショーの舞台には、静止したような風景と、そこを軽やかに動く人物たちという対照的な光景が広がりました。羽や風船を思わせるほど軽やかな動きが、静かな空間に不規則なリズムを生み出し、衣服と身体がともに動くことで景色そのものにも生命が宿ります。今回の演出が印象的なのは、未来的な舞台装置だけを強調するのではなく、その中心にいる人間の身体を際立たせている点です。動き続ける個人の姿を通して、衣服は静止した造形物ではなく、日常の行動とともに変化するものとして提示されました。ルイ・ヴィトンが2027春夏で描いたのは、軽さを視覚的な効果にとどめず、身体が動くための自由として捉えた新しいワードローブです。
All photos courtesy of LOUIS VUITTON
2027春夏ウィメンズ·コレクションは、下記公式ホームページよりご覧いただけます。
https://jp.louisvuitton.com/jpn-jp/homepage
詳細は、ルイ·ヴィトン 公式サイト louisvuitton.comをご覧ください。
【Editor's View】
今回のルイ・ヴィトン 2027春夏ウィメンズ・コレクションを読み解く鍵は、「未来的な服」という表面的な印象よりも、身体をデザインの起点へ戻したところにあります。ニコラ・ジェスキエールはこれまでもメゾンの歴史的なコードと新しい技術や素材を交差させてきましたが、今回はその視線を身体そのものへ向けました。公式発表が示す「衣服、身体、動作の調和」という考え方は、軽量素材や流動的なカッティングという具体的な形へ落とし込まれています。ルーヴル美術館クール・カレという歴史的な場所に対して、ショーでは空中を漂うような軽さを感じさせる衣服が動き続ける身体とともに現れました。静止した建築と流動するファッションの対比は、メゾンが積み重ねてきた時間と、これからの衣服への視線を同時に感じさせます。旅を支えてきたルイ・ヴィトンの機能性というヘリテージを、現代の身体感覚から再解釈した点に、今回のコレクションならではの新しさがあります。
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