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カルティエの名作「タンク アメリカン」が進化、スケルトンとアールデコで描く新しい輪郭

直線と曲線、ケースとムーブメント、伝統と革新。カルティエが長年磨いてきた「タンク」の美学は、相反する要素を一つの造形へまとめることで進化してきました。今回「タンク アメリカン」に加わるのは、内部構造そのものをデザインとして見せるスケルトンと、アールデコの幾何学をダイアルに刻み込んだモデルという2つの特別なタイムピース。湾曲したケースを特徴とする「タンク アメリカン」の流麗なフォルムを共通の出発点としながら、それぞれ異なる方向からメゾンの創造性を掘り下げています。ローマ数字を象ったブリッジ、複数の仕上げを重ねたダイアル、色彩を幾層にも重ねるラッカー技法。細部を追うほどに、カルティエが時計を「時間を示す道具」以上のものとして捉えていることが伝わります。
カルティエ「タンク アメリカン」に特別な2作、スケルトンとアールデコで深化する時計の造形美
Eduart Sanchez Ribot © CARTIER

「タンク」の原点は、1917年にルイ・カルティエが生み出した幾何学的な造形にあります。長方形を思わせるケースの両側に平行する縦枠を配し、視覚的に縦へ伸びるシルエットを構築。ケースとブレスレットを一体のデザインとして捉える発想も、この時計を特徴づける要素となりました。機能を収める器としてケースを考えるだけではなく、フォルムそのものを創造するというアプローチは、カルティエのウォッチメイキングを象徴するものです。ルイ・カルティエの着想から始まったこのデザイン哲学は、その後さまざまな「タンク」へ受け継がれ、幾何学性と技術性を融合したメゾン独自のアイデンティティを形づくっています。

その造形をさらに身体へ近づけたのが、1921年に誕生した「タンクサントレ」です。手首の曲線に沿うようケース自体を湾曲させ、細身で左右対称のシルエットへと仕立てることで、直線を基本としていた「タンク」に新たな流動性を加えました。この発想は、後に登場する「タンク アメリカン」へとつながります。1988年に発表された「タンク アメリカン」では、湾曲したケースという考え方を受け継ぎながら、ラインをさらに流麗に整理。縦長のプロポーションを際立たせることで、「タンク」が持つ幾何学的な個性を、より大胆で現代的な輪郭へと発展させました。

今回登場するのは、そんな「タンク」の歴史を現代のウォッチメイキングへつなぐ2つの新作、「タンク アメリカン」スケルトンと「タンク アメリカン」アールデコです。いずれも「タンク アメリカン」ならではの流麗なケースラインを基礎にしながら、通常の文字盤表現とは異なるアプローチによって、カルティエの時計製造における技術力と造形感覚を際立たせています。ひとつはムーブメントそのものをデザインの中心へ据え、もうひとつはアールデコの幾何学性を意匠へ取り込むことで、それぞれ異なる方法から「タンク アメリカン」の新しい表情を導き出しました。

「タンク アメリカン」スケルトン

カルティエ「タンク アメリカン」新作、スケルトンとアールデコに宿る建築的な美意識
Eduart Sanchez Ribot © CARTIER


「タンク アメリカン」スケルトンでは、「タンク アメリカン」に初めて1988 MC手巻きスケルトンムーブメントを搭載しました。名称に刻まれた1988という数字は、「タンク アメリカン」が誕生した年に由来しています。最大の特徴は、ムーブメントを支えるブリッジ自体をローマ数字のフォルムに仕立てていること。時間を表示するための機構を隠すのではなく、内部構造そのものをデザインとして見せることで、カルティエならではの造形と時計技術を一つにしています。このムーブメントは2008年に制作されると同時に特許を取得しており、現在ではメゾンを象徴するスケルトン表現のひとつとなっています。

透明感のあるスケルトン構造によって、ケースの内側にはムーブメントが浮遊しているかのような印象が生まれます。こうした表現を実現するには、単にムーブメントの部品を露出させるだけではなく、建築的なケースラインと内部の構造を一体として設計する必要があります。「タンク アメリカン」スケルトンでは、その開放的な構造が湾曲したケースの輪郭と呼応し、時計全体に視覚的な軽やかさを与えています。デザイナーと時計職人をはじめとする専門家がクリエイションスタジオとウォッチ マニュファクチュールで対話を重ねながら形にしたもので、機械式時計の構造をそのまま美的要素へ転換。ローマ数字を思わせるブリッジの造形も含め、アールデコを想起させる幾何学性が「タンク アメリカン」の建築的なデザインをより強く印象づけています。

ケースは44.4×24.4mmのプラチナ製で、ポリッシュ仕上げとサテン仕上げを交互に施すことで、一つの素材の上に異なる光の表情をつくり出しています。細部にも「タンク アメリカン」の曲線と呼応する設計が行き渡り、分目盛りやカルティエ ロゴにはエングレービングとブラックエナメルのコーティングを採用。ムーブメントを構成するブリッジもケースの湾曲に沿うようカーブを描き、外装と内部構造のつながりを明確にしています。素材の仕上げ、文字盤まわりの装飾、ブリッジの形状までを一つの造形として整えることで、スケルトンウォッチでありながら「タンク アメリカン」の端正なプロポーションを崩さない完成度へと導いています。

「タンク アメリカン」スケルトンには、ケース素材に合わせて異なる色調のインターチェンジャブル アリゲーターストラップが用意されています。プラチナモデルには深みのあるボルドー、ピンクゴールドモデルにはダークブルーを組み合わせ、金属とストラップの色彩がそれぞれの個性を引き立てます。ストラップを付け替えられるインターチェンジャブル仕様によって、建築的なケースの存在感に別のニュアンスを加えながら、装いに合わせたスタイリングも楽しめる設計です。

「タンク アメリカン」アールデコ ダイアル

カルティエ「タンク アメリカン」スケルトンとアールデコ、幾何学とクラフツマンシップの結晶
Eduart Sanchez Ribot © CARTIER


「タンク アメリカン」アールデコは、その名の通りアールデコの幾何学的な美意識を時計の造形へ落とし込んだモデルです。左右対称の構成と奥行きを感じさせるラインが重なり、直線的でありながら立体感のある表情を形成しています。そこに込められているのは、装飾をただ重ねるのではなく、洗練と個性を細部から表現するダンディズムへのオマージュ。デザインからラッカー、型押しに至るまで異なる専門技術を持つ職人たちが協働し、芸術性と技術性を一つのケースとダイアルに結び付けています。

44.4×24.4mmの湾曲したプラチナケースはサテン仕上げで整えられ、その端正な表面がダイアル上の幾何学模様を際立たせます。視線を縦へ導くダイナミックなグリッドにはボルドーのグラデーションを施し、色の濃淡によって奥行きを表現。ストラップも同系色で揃えることで、ケースからダイアル、そして手元へと視線が自然に流れるよう構成されています。さらに、八角形のリューズにはファセットカットのルビーをセット。鮮やかな赤がダイアルとストラップのボルドーに呼応し、幾何学的なデザインにジュエリーならではの輝きを加えています。

このダイアルを特徴づける幾何学模様は、複数の仕上げを重ねる高度な工程によって生み出されています。もっとも明るい部分にはサンレイ仕上げ、最も暗い部分にはオパライン仕上げ、その中間にはサテン仕上げを用いることで、一つのモチーフのなかに異なる反射と質感を生み出しました。同じ色調でも光の受け方が変わるため、グリッドは平面的な図柄ではなく、視線の動きに応じて表情を変える立体的な構成として浮かび上がります。アールデコ特有の秩序ある幾何学を、仕上げの差によって動きのある表現へ転換した点が、このモデルの大きな特徴です。

その上に重ねられる色彩も、複数の工程によって奥行きを与えています。まずニッケル合金でコーティングするガルバナイズド加工を施し、その後に赤みを帯びたラッカーを重ねることで、ダイアルに独特の温かみと豊かな色調を生み出します。さらにグレーのパウダー転写で輪郭の明瞭なマーキングを加え、最後に光沢のあるニスで表面を保護しながら輝きを高めています。下地、色、マーキング、仕上げを順番に積み重ねることで、単色では表現できないニュアンスをつくり出しているのです。アールデコのグラフィカルな美しさを保ちながら、手仕事による微細な表情まで感じさせるダイアルに仕上げられています。

ケースの曲線と呼応するインターチェンジャブル アリゲーターストラップを備え、ムーブメントには自動巻きメカニカルムーブメント1899 MCを搭載します。その名称は、カルティエがラペ通り13番地にブティックを構えた年にちなむものです。「タンク アメリカン」の湾曲したケースに収まるよう小型化された1899 MCは、外観の流麗なプロポーションを損なうことなく、機械式時計としての駆動を担います。ケースやダイアルだけでなく、内部のムーブメントにまでカルティエの歴史を結び付けることで、新作はアールデコの意匠とメゾンのウォッチメイキングを一体の物語として完成させています。

カルティエ「タンク アメリカン」スケルトン プラチナ
Antoine Pividori © Cartier​

「タンク アメリカン」スケルトン
プラチナ
手巻きムーブメント 1988 MC
インターチェンジャブル フォールディングバックル
サイズ:44.4×24.4mm、厚さ:8.24mm
日常生活防水
セミマット ボルドーアリゲーターストラップ
セミマットダークグレー アリゲーターストラップのセカンドストラップ
¥9,306,000​ (予定価格)
※9月1日発売予定


カルティエ「タンク アメリカン」スケルトン ピンクゴールド
Antoine Pividori © Cartier​

「タンク アメリカン」スケルトン
ピンクゴールド
手巻きムーブメント 1988 MC
インターチェンジャブル フォールディングバックル
サイズ:44.4×24.4mm、厚さ:8.24mm
日常生活防水
セミマットダークブルー アリゲーターストラップ
セミマットダークグレー アリゲーターストラップのセカンドストラップ
¥8,052,000(予定価格)
※9月1日発売予定


カルティエ「タンク アメリカン」アールデコ ダイアル  プラチナ
Antoine Pividori © Cartier​

「タンク アメリカン」アールデコ ダイアル 
プラチナ
異なる仕上げ(オパライン、サンレイ、サテン)を施した、バーガンディカラー アールデコ ダイアル
自動巻きムーブメント 1899 MC
インターチェンジャブル フォールディングバックル
サイズ:44.4 x 24.4mm、厚さ:8.6mm
セミマットボルドー アリゲーターストラップ
¥4,725,600​ (予定価格)
9月1日発売予定

お問い合わせ先:カルティエ カスタマー サービスセンター
0120-1847-00 

https://www.cartier.com/ja-jp 


【Editor's View】
今回の2作を並べると、カルティエが「タンク アメリカン」の強さを、ケースのフォルムだけでなく内部構造と装飾技法の両面から引き出していることが分かります。スケルトンモデルでは、通常なら時計の内側に収まるムーブメントを視覚の中心へ置き、ローマ数字を思わせるブリッジそのものを造形として成立させています。一方、アールデコモデルでは、グリッドやグラデーション、複数の表面仕上げを組み合わせ、平面のダイアルに奥行きと動きを与えました。どちらにも共通するのは、装飾を加えるだけで終わらず、ケースの湾曲や素材、機械構造まで含めて一つの建築として考えていることです。カルティエ公式のウォッチメイキング資料でも、「タンク アメリカン」のために1899 MCを小型化したことが示されており、デザインと機械を別々に扱わないメゾンの姿勢が今回の新作にも通底しています。

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