2026.02.19
カテゴリ: 新作
ティファニーのパイヨン エナメル ウォッチ、シュランバージェのバングルを受け継ぐ芸術的タイムピース
ティファニーの新作エナメル ウォッチは、単にアーカイブを復刻したアイテムではなく、メゾンの長い歴史に蓄積された技術と審美眼を、今のライフスタイルに溶け込ませるためのひとつの答えのように感じられます。ジャン・シュランバージェによる1960年代のパイヨン エナメル バングルを原点としながら、そのデザインコードをミニチュア化し、文字盤やブレスレットへと精緻に落とし込むことで、ジュエリーとウォッチの境界が曖昧になるような存在感を獲得しています。ダイヤモンドの光とエナメルの色、そしてイエローゴールドのウォームなトーンが重なり合う手元は、ドレスアップした夜にも、シャツ一枚で過ごす日中にもよく似合い、タイムレスなアイコンを日常のシーンで自由に楽しみたい人の心をそっと後押ししてくれます。

ジャン・シュランバージェが残した造形の遺産を、今の感性でどのように語り直すかというテーマから、メゾン ティファニーは新たに「エナメル」ウォッチを生み出しました。1962年にジャン・シュランバージェがデザインしたジュエリー コレクションにインスピレーションを求めたこのタイムピースは、かつての意匠を忠実に写すのではなく、その精神を現代的なプロポーションとバランスに落とし込んだものです。展開は3つのバリエーションで、ブレスレットのように手元を飾りながら時を告げるこのコレクションは、ジュエリーとウォッチのどちらの側面も楽しみたい人にとって、日常のスタイルに物語性を添える新しい選択肢になっています。
まず目に入るのは、ダイヤモンドが繊細にあしらわれた文字盤を囲む回転リングです。ここにはティファニー ブルーのパイヨン エナメル、もしくはホワイト エナメルが丁寧に施され、その外周をコレクションの象徴である18K イエローゴールドのクロスステッチ モチーフが縁取っています。この意匠を支えるケースには、36mmサイズの18K ホワイトゴールド製とイエローゴールド製が用意され、数量限定で制作される点も特別感を高めています。ジュエリーのような意匠と実用的なサイズ感が共存することで、オンオフを問わず装いのアクセントとして活躍するウォッチとして完成されています。
メゾン ティファニーがエナメルに注目し始めたのは、19世紀後半のことです。1870年代にはすでにこの分野の探求を進めており、その集大成のひとつとして、1878年のパリ万国博覧会で自社初のエナメル作品となる豪華なデザート プレート セットを発表しました。その背景には、ティファニーの工房で宝石職人や金細工師、銀細工師と共に働く職人たちが、多彩なエナメル技法を日々研究しながら腕を磨いていたという土壌があり、メゾンにおけるエナメル工芸の伝統がしだいに育まれていきました。
この歴史のなかで、七宝焼き、フリンケ(繊細なギョーシェ彫りの上に透明なエナメルを重ねる技法)、グライザイユ(限られた色調で絵画的な陰影を描き出す技法)といった多様な手法が、花瓶やブローチ、クロック、ウォッチなど幅広いオブジェに応用されてきました。現在ザ ティファニー アーカイブには、19世紀末に制作されたエナメルと貴石を組み合わせたシャトレーンやラペル ウォッチのシリーズ、1889年の名作アップル ブロッサム ラペル ウォッチ、さらに1920年代のアール デコ調テーブル クロックのコレクションが収蔵されており、エナメル表現がどれほど豊かに発展してきたかを示す貴重な資料として存在しています。
1962年という節目の年に、ジャン・シュランバージェはハイジュエリーの世界でほぼ忘れ去られていたパイヨン エナメルの技法に再び光を当てました。その結果生まれた作品群は、鮮烈な色彩と記憶に残るフォルムを兼ね備え、20世紀のジュエリーデザインを象徴する存在として高く評価されています。パイヨン エナメルを用いたジュエリーがティファニーの代表作として語り継がれていることは、メゾンが歴史ある技法を未来へつなぐ役割を担ってきたことを物語るエピソードと言えます。
パイヨン エナメルは、19世紀に発展した高度な工芸技法です。金属の上にきらめくエナメルの層を重ねるこの表現には、高度な手仕事と繊細な審美眼が求められ、その独特の美しさにもかかわらず、20世紀半ばにはほとんど姿を消しました。ジャン・シュランバージェがジュエリーデザインを通してこの技法をよみがえらせてから数十年が経った現在でも、緻密で時間のかかる工程を習得した職人は世界的にみてもごくわずかであり、その希少性が作品に特別な価値観を与えています。
制作のプロセスに目を向けると、まずエナメル職人が金箔または銀箔のシートから極小のパーツを切り出し、装飾したい素材の表面に一つずつ配置していきます。その上から半透明の色を帯びたエナメルを重ね、高温で焼成する工程を経ることで、金属箔とエナメルが一体となった表情が生まれます。この三つのステップを、理想とする色調や奥行きを引き出すために何層にもわたって繰り返すことで、パイヨン エナメルならではの深みのある光沢とニュアンスがようやく完成し、ひとつのウォッチやジュエリーに宿ります。

ジャン・シュランバージェによるパイヨン エナメル デザインのなかでとりわけ象徴的な存在として語られるのが、1962年に生まれたクロワジヨン バングルです。世界中のスタイルリーダーたちがこのバングルを腕にいくつも重ねて着けたことで、その名は一気に広まりました。特徴的なクロワジヨン モチーフは、18Kイエローゴールドで表現されたクロス ステッチと直線的なステッチを交互に並べることで構成されており、フランスのアルザス地方でテキスタイルメーカーを営んでいた名家に生まれたシュランバージェの出自に根ざした発想から生まれています。布地を縫い合わせるクロスステッチは、大切なもの同士を結び付ける行為の象徴とされ、育まれていく愛情を表現するモチーフとしても読み解くことができます。
今回のエナメル ウォッチでは、そのクロワジヨン バングルのスピリットが文字盤の構造に緻密に落とし込まれています。文字盤はまず中央の固定式ディスクと、その外側を取り巻くアウターリングという二層から成り立ち、センターにはダイヤモンドをセットしたディスクが静かに光を放ちます。一方のアウターリングには、クロワジヨン バングルをミニチュアとして再解釈したモチーフが配され、12個のクロスステッチが時刻を示す役割を担いますが、一般的なインデックスと異なり手首の動きに合わせて自由に回転する構造です。この動きのあるデザインが、シュランバージェの遊び心に満ちたアプローチをそのまま凝縮したような表情を生み出し、ダイヤモンドの輝きと対照をなす18Kイエローゴールドの針が、クロスステッチと呼応しながら柔らかな統一感を演出しています。
ティファニー ブルーの輝きが印象的な回転リングの制作には、合計で65時間もの時間が費やされます。内訳として、パイヨン エナメルによるエナメル加工に約55時間、ゴールドステッチの手作業による形成と装飾に約10時間が必要とされ、ひとつひとつのリングが職人の集中力と熟練の技に支えられて完成します。ティファニー ブルーのリングには、まず金箔または銀箔を所定の位置に配置し、その上からエナメルを塗布して高温で焼成するという三段階のパイヨン エナメル技法が最大3回繰り返されます。この重ねのプロセスによって、理想的な深みと豊かな色合いが生まれ、比類なき光沢が手元の動きに合わせて奥行きのある表情を見せてくれます。
このエナメル ウォッチは、ダイヤモンド セッティングにおけるティファニーの卓越したクラフツマンシップを体現する存在でもあります。ケースと文字盤中央のディスクには、さまざまなサイズのラウンドブリリアントカット ダイヤモンドがスノーセッティングで敷き詰められ、地金の露出を最小限に抑えることで、ほぼ途切れることのない光の広がりと繊細な反射を生み出しています。文字盤中央には204石のダイヤモンドが、36mmケースには366石のダイヤモンドがセットされており、その総量は合計約3カラットに及びます。数字としてのボリューム以上に、細かな粒が連続して輝く表情が、視線を引き寄せるような密度のある美しさにつながっています。
ケースバックに目を移すと、ジャン・シュランバージェのフローラル アロー ブローチから着想を得たサンバースト模様が刻まれ、そのデザインを際立たせるように14石のダイヤモンドが配されています。側面には全体のスタイルと調和するプッシュボタンが設けられ、スイス製高精度クォーツムーブメントによる時刻表示を、このボタン操作によって細かく調整できる構造です。見えない部分にも物語を宿す装飾と、実用性を支えるムーブメントが同居することで、ジュエリーとしての華やかさと時計としての信頼感がひとつのピースに集約されています。

エナメル ウォッチに合わせて用意されたアリゲーターストラップは、手首を包み込むレザーの表情と、留め具にあしらわれたダイヤモンドのきらめきがバランスよく共存する仕立てです。ストラップは、43石のラウンドブリリアントカット ダイヤモンドをセットした18KイエローゴールドまたはホワイトゴールドのTバックルによって留められ、バックル自体がひとつのジュエリーのような存在感を放ちます。さらにハイジュエリーモデルでは、18Kホワイトゴールドケースにティファニー ブルー エナメルを施し、666石(合計4.48カラット)のダイヤモンドをセットした18Kホワイトゴールドのフルパヴェ ブレスレットを組み合わせています。ウォッチとブレスレットが一体となったこのモデルは、フォーマルなシーンの主役としても成立するほどの華やかさを備え、ティファニーが提案するハイジュエリー ウォッチの到達点のひとつを示しているようです。
商品情報
ケース幅:径36㎜
機能:時と分
素材:18K イエローゴールド/18K ホワイトゴールド(ケース)、18K イエローゴールド(針)
文字盤:ダイヤモンド(センターディスク)、エナメル/12個のクロスステッチ/12個の直線のステッチ(アウター回転リング)
ダイヤモンドの合計:613石(合計4カラット以上)
・ケース:スノーセッティングによるラウンド フルカット ダイヤモンド366石(合計2.94カラット)
・文字盤:スノーセッティングのダイヤモンド204石
・Tバックル:ラウンド フルカット ダイヤモンド43石
フル ダイヤモンド モデル:ダイヤモンド1,236石(合計8.38カラット)
・ダイヤモンド ブレスレットダイヤモンド666石(合計4.48カラット)
ケースバック:サンバーストのデザインをエングレービング、ダイヤモンド14石
ムーブメント:スイス製高精度クォーツムーブメント
ストラップ:ティファニー ブルー アリゲーター、ホワイト アリゲーター、18K ホワイトゴールド フルパヴェ ブレスレット
保証:5年間国際保証
スイス製
tiffany.co.jp
【Editor's View】
ティファニーのエナメル ウォッチは、ジャン・シュランバージェが生み出したパイヨン エナメル バングルの伝説を、手元の小さなキャンバスへと移し替えたような存在です。クロワジヨン バングルのステッチワークをミニチュアのアウターリングに凝縮し、ティファニー ブルーのパイヨン エナメルとスノーセッティングのダイヤモンドを重ねることで、時間を見る行為そのものがひとつの所作として際立つように構成されています。アリゲーターストラップのモデルなら、シャツやニットに合わせてデイリーな装いをさりげなく格上げするパートナーとして、フルパヴェ ブレスレットのハイジュエリーモデルなら、イブニングシーンでドレスアップの仕上げ役として活躍するでしょう。歴史あるアーカイブの引用でありながら、完成したウォッチは今を生きる人の日常にしっかり寄り添うバランスを備えていて、アーカイブと現代性の距離感をどう楽しむかという視点でも味わいがいのあるピースになっています。
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