2025.10.10
カテゴリ: 新作
ルイ・ヴィトン 初の腕時計「モントレ」を188点限定で復刻、ウォッチメイキングの新章を象徴
ルイ・ヴィトンが1988年に発表した初の腕時計「モントレ」。その復刻モデルがいま、クラフツマンシップとデザインの粋をまとって帰ってきました。ペブルシェイプの輪郭、ホワイトエナメルの奥行き、手にしたときの感触までもが、時の重なりを語ります。188点限定で発表された今回のエディションは、装飾や素材選びの一つひとつに、メゾンが蓄積してきた知見と美意識が凝縮された証し。装いの一部を超えて、時間そのものに意味を与えるような存在としてのウォッチがここにあります。
「ルイ・ヴィトン モントレ」は、メゾン創業時のウォッチメイキングに込められた精神を、現代の審美眼で再読した限定モデルです。1980年代に登場し、時代を映すアイコンとして注目を集めた初代モデルのエネルギーを再び呼び起こし、コレクターたちの記憶に深く刻まれた造形を、現代の解釈で蘇らせています。

この復刻モデルは、ルイ・ヴィトンが時計の世界に本格的に参入した1980年代後半の初期作を起点としています。今回発表された「ルイ・ヴィトン モントレ」は、建築家ガエ・アウレンティがデザインしたペブルシェイプの「LV I」「LV II」にオマージュを捧げ、メゾンが提唱する“旅のエスプリ”を造形で体現。革新的なそのシルエットは、時計愛好家の間で現在も熱い支持を集めています。
このモデルを現代に引き継ぐ役割を担ったのが、ルイ・ヴィトンの専属アトリエ「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」です。1988年当時の象徴的なデザインコードを尊重しつつ、素材と技術の面でアップデートが図られました。イエローゴールドのケースに、ホワイトのグラン・フー エナメルダイヤルが映えるこの新作は、クォーツムーブメントから自社製の自動巻きムーブメントへと刷新。わずか188本の限定生産という希少性も、コレクター心理をくすぐる要素のひとつです。
アーティスティック・ディレクターを務めるマチュー・エジは、「再解釈とは、元の創造物に対する敬意とともに、その魅力をいかに今の感覚で再構成できるかという挑戦」だと語ります。オリジナルが持つグラフィックコードを保ちつつ、時代の洗練をどう重ねるかが今回のテーマであり、その成果がこのウォッチの佇まいに凝縮されています。
型破りな発想へのオマージュ
1988年に発表された「LV I」「LV II」は、パリ・オルセー美術館への駅舎改築で注目を集めていた建築家ガエ・アウレンティとの協働で誕生しました。1960年代から数多くの革新的なプロダクトを生み出してきた彼女が、ルイ・ヴィトンと手を組み、時代の先を行くアバンギャルドな時計デザインを形にしたことは、当時のメゾンの冒険心と創造性を象徴するエピソードとして今も語り継がれています。
「LV I」は、旅の象徴である鉄道の線路から着想を得たディテールに加え、日付表示や世界時間機能を備えた40mmサイズのモデル。ホワイトまたはイエローゴールド製のケースに、ラグを排した丸みを帯びたペブル型のフォルムが特徴です。12時位置には懐中時計へのオマージュを込めたクラウンが据えられています。一方で、37mmサイズの「LV II」は、ブラックとグリーンのカラー展開で登場。セラミック素材の使用やアラーム機能を備えるなど、実用面でも先鋭的な試みが随所に見られます。

1988年に発表されたウォッチ「LV I」、「LV II」のオリジナルデザイナー、ガエ·アウレンティ
LV I Historical Timepiece from 1988
時計の名称「モントレ」は、フランス語で腕時計を意味する「montre」の米国風発音から着想を得たもの。かつて「Montre 1」「Montre 2」として親しまれた初代モデルに敬意を払い、復刻版にもこの愛称が受け継がれています。この呼び名は、機能やスペックを超えた“所有する愉しさ”を象徴する要素として、多くの愛好家の記憶に残り続けています。
オリジナルモデル「LV I」「LV II」が世に出た1988年から約40年。かつての先鋭的な意匠が、いま再び次世代のスタイルリーダーたちの手元に戻ってきました。新作「モントレ」は、現代の感性と共鳴するアイコンとして支持を集め、ルイ・ヴィトン 2025年秋冬ウィメンズ・コレクションのランウェイでも際立つ存在に。アーティスティック・ディレクターのニコラ・ジェスキエールが、当時の「LV II」をプレタポルテに重ね、モダンな表現へと昇華させました。
大胆な再解釈
初代モデルの大胆な造形とコンセプトを、現代的な感性で新たに編み直した「ルイ・ヴィトン モントレ」。この限定ウォッチは、オリジナルのデザインコードに立脚しながら、ルイ・ヴィトンの時計製造部門「ラ・ファブリク・デュ・タン」の高い技術と美意識を通じて、タイムレスかつ新鮮な姿へと進化しました。シンプルな外観の奥に、豊かな知識と職人技の集積が感じられます。
ケースサイズ39mm、素材はイエローゴールド。ペブルシェイプが放つ丸みと厚みのバランスが秀逸で、ダイヤルには高い透明度と深みを誇るホワイトのグラン・フー エナメルを採用しています。かつて搭載されていたクォーツムーブメントは、自社製の自動巻きムーブメントにアップデートされ、視認性を高めるためにレッドとブルーのアクセントがツインアワーとミニッツスケールに加えられました。限定生産188点という希少性も、このモデルに特別な緊張感を与えています。



エナメルが生み出す美
グラン・フー エナメルは、18世紀から続く伝統技術であり、耐久性に加えて、色の安定性と優れた発色を併せ持つ素材として知られています。新しいダイヤルに採用された理由は、ミニマルな構成の中に温かみや奥行きを与える視覚効果を生むから。グラフィカルな要素が引き立つ背景として、強くも繊細な存在感を放っています。何世代にもわたってその美しさを保ち続けられる理由が、ここにあります。
グラン・フー エナメルのダイヤルが完成するまでには、約20時間にも及ぶ作業工程が必要です。金属ベースに何層にも渡ってガラス質のエナメルを重ね、そのたびに800〜900℃の高温で慎重に焼成するプロセスが繰り返されます。各段階で破損のリスクがつきまとうため、わずかなミスも許されず、すべてが最初からやり直しになることも。この工程にこそ、手仕事ならではの緊張感と集中力が息づいています。
特にホワイトの仕上げは、エナメル加工の中でも難易度が高い領域です。最初に微細な不純物を取り除く色調整が行われ、続いてホワイトゴールド製の文字盤に手作業でエナメルを塗布していきます。極細のブラシによる重ね塗りと焼成を繰り返すことで、深みと不透明度のバランスを丁寧に構築。一見シンプルな顔を持つホワイトダイヤルですが、その裏側には、タイミングと手先の感覚がすべてを決定づける精密な技が凝縮されています。
さらに仕上げ段階では、グラスペーパーによって文字盤の表面を滑らかに整え、焼成によるガラス化に向けた最終工程へと進みます。焼成は720℃で10回繰り返され、エナメル層がオパールのような艶を纏う状態に仕上がります。この深みと輝きは、工業製品では決して生まれない、人の手による繊細な技術の結晶です。


スタンピングの作業では、ブルー、レッド、ブラックといった顔料をブレンドし、エナメルパウダーと組み合わせてペースト状に練り上げるところから始まります。このエッセンスを用いて、文字盤に配されたグラフィックパターンを形成。約2時間かけて、色ごとの深さやコントラストを調整しながら機械で正確に押印され、ブランドのシグネチャーが浮かび上がっていきます。ここでもまた、視覚と精密性が高度に交錯しています。
カラーごとのスタンピング工程は合計8回に及び、460℃で4回、続いて600℃で4回の焼成が行われます。ダイヤルと調和するホワイトゴールド製の針には、オリジナルモデルのデザインDNAが引き継がれており、鋭角的なシリンジスタイルのフォルムが特徴です。レッドラッカーの差し色が印象を引き締め、ブルースティールの秒針と織りなす色彩のコントラストが視覚的な緊張感を生み出します。ダイヤルには「FAB. EN SUISSE」「LOUIS VUITTON PARIS」の2つのシグネチャーが静かに刻まれ、細部までブランドの矜持が息づいています。

アイコニックなケース
「ルイ・ヴィトン モントレ」のケースは、「ラ・ファブリク・デ・ボワティエ ルイ・ヴィトン」で一つひとつ手作業で製作されたもの。オリジナルモデルを忠実に再現しながらも、現代のクラフツマンシップで磨き直された姿に仕上げられています。39mmのイエローゴールドケースは、光の反射で優しく輝き、懐中時計を思わせる12時位置のクラウンがアクセントに。手作業で丁寧に成形された幅広クラウンには「クル・ド・パリ」テクスチャーが施され、触れた瞬間の心地よさと、微細な技巧の存在感が漂います。
ガエ・アウレンティの革新的な発想を受け継ぎ、ラグのない構造と独自のケースバックが再解釈されました。1988年モデルの個性を継承しつつ、クイックリリース式のストラップを現代的に採用。ケースバックには「1 of 188」の刻印が控えめに施され、レザーストラップの下にそっと忍ばせたこのディテールは、所有者だけが知る密やかな美しさとして機能します。



新たな機械式ムーブメント
内部に搭載されたのは、自社製ムーブメント「LFT MA01.02」。このムーブメントのために設計されたケースプロポーションは、外から見えない部分にもルイ・ヴィトンの美意識が貫かれていることを物語ります。サーキュラーグレイン仕上げのメインプレート、サンドブラスト加工のブリッジ、マイクロサンドブラストのエッジなど、見えない構造体にまで緻密な手仕事が施され、表面的な美しさだけにとどまらない価値を宿しています。
ムーブメント内部にも、ルイ・ヴィトンならではの象徴性が息づいています。18Kローズゴールド製のローターには、モノグラムを彷彿とさせるV字の切り込みが施され、バレル下には「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」の証である「LFT」ロゴがさりげなく記されています。キャリバーは28,800振動/時、パワーリザーブは45時間と、現代的な日常に応える実用性も十分。仕上げに使用されたカラーレスサファイアが、ウォッチ全体に洗練された透明感を添えています。
「このタイムピースは、オリジナルの精神を尊重しながら、現代の文脈で再構築したものです」とマチュー・エジは語ります。ペブルシェイプの美しさ、独自のレザーアタッチメント、12時位置の象徴的なクラウンなど、1988年モデルのエッセンスを残しつつ、ホワイトエナメルのデカール仕上げには、変わることのないクラフツマンシップへの敬意と、永続する輝きへの祈りが込められています。
ルイ・ヴィトンがこのモデルで示したのは、時代に左右されない普遍的な美と、未来を見据えた革新の両立でした。伝統を礎にしながら、現代の感性をまとった「ルイ・ヴィトン モントレ」は、過去と未来の間に新たな時を刻む存在として、ウォッチメイキングの真価を改めて証明する一作となっています。

「ルイ·ヴィトン モントレ」
W0YG11
価格:8,503,000円(税込)
ケース
素材:18Kイエローゴールド
• 直径:39 mm
• 厚さ:12.2 mm
• 反射防止コーティングされたサファイアクリスタル
• 「1 of 188」の刻印を施したクローズドケースバック
• 防水:50 m
ダイアル
• グラン・フー エナメルを施した18Kホワイトゴールドのプレート
• レッドラッカーコーティングを施した18Kホワイトゴールド製の時分針、
ブルースティール製の秒針
ムーブメント
• キャリバーLFT MA01.02:自動巻き機械式ムーブメント
• 直径:23 mm
• 厚さ:5.4 mm
• 機能:時、分、秒
• ローター:18Kピンクゴールド製
• パワーリザーブ:45時間
• 石数:26
• 振動数:28,800 回 / 時 - 4Hz
ストラップ
• ブラックカーフレザー
• 18Kイエローゴールド製のピンバックル
All photos courtesy of LOUIS VUITTON
詳細は、ルイ·ヴィトン 公式サイトhttps://www.louisvuitton.com をご覧ください。
【Editor's View】
「ルイ・ヴィトン モントレ」の復刻は、過去の名作を現代に再現するだけでなく、ブランドが長年築いてきた価値観や美意識を鮮やかに映し出すプロジェクトです。1988年当時の革新性と今日のクラフツマンシップが交わることで、時を纏う行為そのものに深い意味を持たせるタイムピースへと昇華されています。
ホワイトエナメルの奥行き、ラグレス構造の柔らかさ、レッドとブルーの差し色が放つ躍動感。それらはいずれも過剰にならず、持つ人の感性に静かに働きかけるバランス感覚で形づくられています。
現代のウォッチが、スマートデバイスと機能を競う時代から一歩離れ、意味や感性を重視する方向へ進化する中で、「モントレ」はメゾンの歴史と未来、そして職人たちの手業をつなぐ象徴的存在となっています。時間を確認する道具としてではなく、時間そのものを味わうための相棒として、成熟した審美眼を持つ人にこそふさわしい一本です。
BRAND SEARCH
CATEGORY
ABOUT
「BRANDJOY.JP」はラグジュアリーブランドなどの最新動向に関連するニュースをセレクトしてお届けしています。新作やコレクションを中心に、新規オープン、ビジネス・業界情報をまとめてチェック。