2025.03.27
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グッチ GUCCI のシルクが語る芸術と文化の記憶「The Art of Silk」プロジェクト


グッチが新たに発表した「The Art of Silk」プロジェクトでは、シルク製品におけるクラフツマンシップの豊かな歴史を称えると同時に、芸術表現の新たな地平を切り拓いています。1950年代から続くシルクスカーフの系譜を辿りながら、ファッションとアートの領域で現代的に再構築されてきたその変遷を通じて、過去と現在をつなぐ創造的な旅が展開されています。
「90 x 90」と題されたシルクスカーフプロジェクトには、世界的に活躍する9人のアーティストが参加しています。彼らは、グッチのアーカイブに刻まれた5つの象徴的モチーフ―フローラ、アニマリエ(動物)、ノーティカル(航海)、エクエストリアン(乗馬)、GGパターン―を出発点に、それぞれ独自の視点で新たな表現へと昇華させています。またこの取り組みの一環として、グッチのシルクスカーフが持つ芸術性と歴史を探るアートブック『Gucci: The Art of Silk』が、アスリーヌ社より出版されます。
シルクに息づくグッチのレガシー
グッチのシルクアイテムは1950年代に誕生し、ラグジュアリーと芸術性を象徴する存在としてブランドの礎を築いてきました。創成期のデザインには、グッチのレザーグッズからインスピレーションを得たモチーフが取り入れられ、クラフツマンシップの精神が視覚的に表現されていました。こうしたディテールの積み重ねによって、シルク製品はブランドアイデンティティの中核を担う存在となったのです。
1958年には、グッチがシルク製品の新たな展開へ向けて大きく舵を切りました。イタリア・コモ地方の名門シルクメーカーとのパートナーシップを結び、初のシルクスカーフ「Tolda di Nave」を発表したのです。この航海をテーマとしたデザインは、グッチのシルクラインにおける創造の幕開けを飾る作品として、ブランドの歴史に重要な一歩を刻みました。
1960年代に入ると、グッチはイタリア人アーティストでありイラストレーターのヴィットリオ・アッコルネロ・デ・テスタと協働し、スカーフデザインのさらなる発展を遂げました。彼の繊細で幻想的なモチーフは、スカーフに芸術作品としての価値を与え、グッチの象徴的なアイテムへと昇華させました。1960年から1981年の間にアッコルネロが手がけた約80点ものデザインは、グッチのシルクを「身につけるアート」へと変貌させる原動力となりました。
ブランドの象徴としてスカーフの存在感が高まるにつれて、グッチは多様なモチーフを用いたシルク製品を次々と展開していきました。フローラ、アニマリエ(動物)、ノーティカル(航海)、エクエストリアン(乗馬)といったテーマに加えて、GGパターンやGUCCIロゴがシルクに鮮やかに描かれるようになりました。1969年には、それらのプリントが施されたシルクのシャツやドレスも登場し、こうした意匠は今なおグッチのウェアコレクションに息づいています。
フローラ
グッチの中でも特に象徴的な存在として知られるフローラ プリントのスカーフは、1966年にモナコのグレース大公妃のために特別にデザインされたものです。ロドルフォ・グッチが大公妃に贈る特別なギフトを望んだことをきっかけに、ヴィットリオ・アッコルネロ・デ・テスタがこの作品を手掛けました。彼は、緻密で芸術性に富んだこのスカーフを、わずか1週間という短期間で完成させています。
このスカーフに描かれているのは、27種の花々に加えて、木の実や蝶、昆虫といった自然のモチーフです。すべての要素は繊細な筆致で描かれており、シルクに再現する際には37色のインクを使い、一色ずつ丁寧に重ねる手法でプリントされました。その鮮烈な色彩と緻密な再現性は、グッチが誇る職人技の高さを如実に示しています。フローラ プリントは瞬く間に人気を博し、1969年にはグッチ初となるシルクドレスの誕生にもつながりました。以降、歴代のクリエイティブ・ディレクターがそれぞれの美学で再解釈を重ね、時代を超えてその魅力を維持し続けています。
ノーティカル(航海)
1950年代に登場した「Tolda di Nave」に端を発するノーティカル モチーフは、グッチのシルクスカーフの世界において重要な要素として位置づけられてきました。1960年代にはヴィットリオ・アッコルネロ・デ・テスタのディレクションにより、そのデザインがさらに広がりを見せます。そして1970年代中頃には、「マリナチェーン」というジュエリーやアクセサリーに展開された新たなモチーフが登場し、後にスカーフやウェアへと展開されました。このチェーンパターンは、船旅やヨットといった海辺のライフスタイルの優雅さを象徴するデザインとして、多くのファンを魅了し続けています。さらに2023年には、「マリナチェーン」を新たに解釈したファインジュエリーコレクションが発表され、時代を超えるその魅力が改めて注目を集めました。
アニマリエ(動物)
1969年にヴィットリオ・アッコルネロ・デ・テスタがアニマリエ プリントを発表して以来、動物や昆虫のモチーフはグッチのデザインにおいて欠かせない存在となっています。ライオンや鳥、蝶といった自然の生き物たちをカラフルに描いたアニマリエの図案は、1970年代から1990年代にかけて、ネクタイやスカーフ、さらにはウェアへと幅広く採用され、グッチの自然観を象徴するデザインとして愛され続けています。
GGパターン
1969年に誕生したGGパターンは、グッチ初のシグネチャーモチーフであるディアマンテ パターンをもとに進化を遂げたものです。ふたつのGを反転させ、ダイヤモンド型に配置することで生まれたこのパターンは、まずはラゲージに採用され、そこからスカーフやネクタイ、ウェアコレクションへと用途を広げていきました。現在に至るまで、GGパターンはグッチの視覚的アイコンとしてブランドの核を形成しています。
エクエストリアン(乗馬)
1950年代のグッチは、乗馬やゴルフ、フィッシングなどのアウトドアレジャーから多くのインスピレーションを得ていました。その中でも特に乗馬文化から着想を得た「ウェブ ストライプ」と「ホースビット」は、ブランドに深い象徴性をもたらす重要なモチーフとなりました。ダブルリングとバーからなる「ホースビット」は、当時の乗馬競技への敬意を込めてデザインされたもので、その発表と同時にグッチの象徴として定着します。以降、これらのモチーフはバッグやシューズ、ベルト、ジュエリー、スカーフ、ウェアといった多彩なプロダクトに取り入れられ、グッチの伝統と現代性とをつなぐ意匠として機能しています。
「90 x 90」プロジェクト
『Gucci: The Art of Silk』の中では、「ファッションアーカイブを探るという行為は、観察と解釈を繰り返す連続的な作業であり、スカーフのアーカイブに向き合うことは、一編の物語を読み解くような体験でもあります」と記されています。アーカイブという静かな遺産に、豊かな語りかけが込められていることを印象づける一節です。
「90 x 90」プロジェクトは、グッチの伝統を現代に引き寄せる芸術的な試みとして展開されています。スカーフの定番サイズである90×90cmから名付けられたこのプロジェクトでは、9人の気鋭アーティストが、フローラ、アニマリエ(動物)、ノーティカル(航海)、エクエストリアン(乗馬)、GGパターンというブランドの象徴的な5つのモチーフに向き合い、それぞれ独自の視点で作品へと昇華させています。アートメディアとしてのスカーフに新たな光を当てながら、グッチの豊かな歴史に現代的解釈を重ねています。
ロバート・バリー、エヴェレット・グレン、サラ・レギッサ、カリーニュウ、ジョニー・ニーシェ、ジオ・パストーリ、ワルテル・ペトローン、ユ・ツァイ、ソ・インジの9人のアーティストたちは、それぞれの個性と美意識を投影しながら、印象的なスカーフを制作しました。その仕上がりは、時に皮肉やユーモアを漂わせ、また時には感情豊かな美しさを湛えています。完成した作品には、グッチの伝統とアーティスト自身の世界観が同時に映し出されており、それらはポップアート、ファインアート、ファッションの領域を軽やかに越えた、小さなマスターピースとして存在感を放っています。
『Gucci: The Art of Silk』の中では、「これらのスカーフに登場するすべてのモチーフが、生き生きとした新たな表情を見せています。フローラの中心に咲くユリの花から、サバンナを駆ける動物たちに至るまで、それぞれがSF的なモノトーンの輝きやアドベンチャーコミックを思わせるキャラクターへと変貌を遂げています。こうした表現は、グッチのアイコンに新たな命を吹き込み、未来へ向けて多様な視点と可能性を提示しています」と記述されています。スカーフの中に込められた創造力と、そこから広がる世界観の広がりが感じられます。
Gucci: The Art of Silk
『Gucci: The Art of Silk』は、このプロジェクトの世界観をさらに深めるための一冊として位置づけられています。グッチのシルクスカーフに宿る歴史と芸術性を初めて本格的に取り上げたアートブックであり、国際的に知られる出版社アスリーヌ社とのコラボレーションによって実現しました。文化的価値やクラフツマンシップ、時代を超えて紡がれてきた創造の軌跡に焦点を当て、グッチのスカーフに新たな物語を与えています。
本書『Gucci: The Art of Silk』は、グッチのアイコニックなアイテムであるシルクスカーフの全体像を初めて包括的に紹介するアートブックです。グッチ家によるブランド創設期から、各時代のクリエイティブ・ディレクターがスカーフをどのように位置づけ、進化させてきたかまでを詳細に追っています。ブランドの歩みの中でスカーフがどのようにその時代の精神を映し出してきたのか、また、グッチ家が目指していた現代のメディチ家像や、ルネサンス期フィレンツェの影響、セレブリティや貴族との関係性なども丁寧に掘り下げられています。さらに、アトリエの未公開写真や、トム・フォード、フリーダ・ジャンニーニ、アレッサンドロ・ミケーレ、サバト・デ・サルノといった歴代のクリエイティブ・ディレクターたちのビジョンも紹介され、スカーフとアート、そして最新の「90 x 90」プロジェクトについても触れています。
このアートブックは、著名な編集者であり作家でもあるジョー・アン・ファーニスのキュレーションによって構成されました。さらに、ジェニファー・スリュカやクリストファー・ウォレスをはじめとする寄稿者によるエッセイも掲載されており、そこではグッチのクラフツマンシップと数十年に及ぶ歴史が多角的に語られています。シルクスカーフに刻まれた物語が、文章とビジュアルの両面から立ち上がってきます。
『Gucci: The Art of Silk』は、美術書としての完成度を高めるために、ディテールにまでこだわって制作されています。ケースには美しいシルクプリントが施され、その上に箔押しのGUCCIロゴが輝くデザインが採用されています。コレクターズアイテムとしての価値を高めるこのアートブックは、28×35cmという大判サイズで、全300ページにわたって構成されています。表紙には、グッチを象徴する「フローラ プリント」があしらわれており、ボッティチェリの《プリマヴェーラ(春)》を思わせるその意匠には、手描きによって描かれた43種類の花や植物、昆虫が、37色ものカラーを用いて精緻に表現されています。この印象的な表紙だけでも、グッチの職人技と芸術性の結晶であることが伝わってきます。
本書は、グッチ公式オンラインショップと一部のグッチショップ、アスリーヌ社の公式オンラインショップと書店で販売されます。
詳しくは、www.gucci.comをご覧ください。
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