2025.09.30
カテゴリ: コレクション
フェンディ 2026年春夏 ウィメンズ・メンズコレクション、マーク・ニューソンの軽やかな色と素材で描く新定番
今季のフェンディは、色をまとう感覚そのものを軽くし、装いの重心を上手に移動させます。ピクセルのように細分化されたカラーフィールドと、透けや凹凸を持つ素材が呼応し、体の周囲に心地よい余白をつくる構成です。バッグやシューズはテクスチャと機能を併走させ、ワードローブの更新を現実的に後押しします。ウィメンズとメンズが同じ精神で呼応するため、性別で区切らない選び方がしやすいのも今の気分に合います。夏の街をしなやかに歩くための配色とプロポーションの教科書として記憶に残るコレクションです。
2025年9月24日、ミラノのフェンディ オフィスにて、アクセサリーおよびメンズウェア部門のアーティスティック ディレクター、シルヴィア・フェンディ(Silvia Venturini Fendi)が「フェンディ 2026年春夏 ウィメンズ・メンズコレクション」を披露しました。一つの場でウィメンズとメンズを連続的に見せる構成は、今季の価値観を明快に共有する意図の表れです。ワードローブを性別で分けずに軽やかに行き来したい都市生活者にとって、スタイリングの軸が作りやすい発表でした。
光と色彩が主役となり、未来へ向かう旅の情景を描き出します。フェンディの視点を通すと、軽やかなフォルムと鮮やかな色調が呼応して、夏の新しいリズムが立ち上がります。幾何学模様は移り変わる風景の中で存在感を増し、官能的なムードを引き寄せます。シルヴィアによる軽快なシルエットと遊び心ある設計は、真夏日の装いにストレスを溜めない解を示しており、通勤からバカンスまで一本の線でつながるのが魅力です。
シルヴィア・フェンディは次のように語ります。「これは、リラックスしたカラフルな心地よさと、ロマンティックな優雅さについてなのです。ひとつの定義に縛られるものではなく、日常と卓越したクラフツマンシップの間を行き来する流動性のこと。シンプルな所作の背後に、複雑な仕事が隠れています。その二面性に、私は惹かれてきました」。言葉通り、肩の力が抜けた見え方の裏側で高度な手業が働き、結果として着る人の動きを柔らかく見せます。気分に寄り添う色と繊細な仕立ての両立は、日々の服装に即効性のある変化を与えます。
マーク・ニューソン(Marc Newson)が構想したピクセル化カラーフィールドは、フェンディの本質的なシルエットに重なり合い、原型を越えて形を更新します。鮮烈な色は軽やかなボリュームを形作り、ポジとネガの空間を巧みに配置して身体を柔らかく包み込みます。親しみある要素は再編集され、内面の魅力を引き出すかたちへと変化。構造の厳密さを削ぎ、穏やかな装飾を添えることで、透明感や光沢を帯びたクリスプでクランチーな質感のファブリックが立ち上がります。旅先でも日常でも扱いやすいテキスタイルは、軽量で映える服を求める層に実用面の安心をもたらします。
ウィメンズとメンズは同じ精神で呼応し、要素を共有します。サスペンダーやコルセットを想起させる鮮やかなボタンホールのタブがジャケットにアクセントを加え、ジャケットやスカートの表情を切り替えます。印象派を思わせるフローラルは虹色のレイヤーに咲き、露の雫を思わせるデイジーのパイピングや、アイロニックな「サニーサイドフラワー」の装飾が遊びを添えます。ジッパー、ドローストリング、ダブルフェイスといったディテールは、ソフトなテーラリングやスポーツ由来のシェイプにみずみずしい色を差し込みます。仕事着と週末着を分けずに更新したい人に、配色とディテールでの調整余地を与える提案です。
色そのものが癒しとして機能し、前向きなインパクトを生みます。純白、コンクリート、太陽のように明るいイエローを起点に、ターコイズ、ヴァーミリオン、バブルガム、コーラルピンク、キャンディカラーへ広がる多彩な調べが展開。コントラストパネル、穴あきレザー、シアーなジャカードはリラックス感とモジュール性を併せ持ち、見せる部分と覆う部分のさじ加減を自在に操る服を成立させます。体温やシーンに合わせて肌の見え方を調整しやすく、オフィスにもリゾートにも馴染むバランスが実現します。
ショートブレザーやゆったりとしたコットンコートは、裾に寄せたバルーンヘムが空気を含み、装い全体に軽やかさと品の良さを生みます。オーガンザの襟やフリルの袖口で仕立てたボンバージャケット、フィッシュテールを取り入れたティアードスカートが動きの度に陰影をつくり、視線を自然に導きます。さらにメンズシャツをベースに、タキシード風のブラウス、変形ボックスプリーツのミニスカート、細身のシャツドレスへと置き換える発想が加わり、ひとつの定番が多面的に展開されます。通勤とオケージョンを横断したい読者には、シルエットの変換で印象を調整できる点が実用的です。
半透明のオーガンザ、クロシェ編みのポロシャツ、シルクケーブルニットのツインセット、テクニカルシェルスーツなどの素材構成で、少年の軽やかさと大人の余裕を同居させたアンサンブルを形成します。光沢のある刺繍はポルカドットやパーフォレーションの表情を帯び、手描きの小さなブーケがフローラルレースに繊細な色を差し込みます。デイジーや織り模様は、シアリングやプラッシュコートに懐かしさを宿しつつグラフィカルに更新されます。質感のレイヤーが豊かなので、難しいテクニックに頼らず重ねるだけで奥行きが生まれ、週末のワントーンにも華やぎを加えられます。
アクセサリー群は、構造の巧みさとユーモアのある装飾が同居する構成です。表面のテクスチャや立体ディテールが夏らしい軽快さを後押しし、装いの要として機能します。ビーズの紐を優雅に配した「フェンディ コリエ(FENDI Collier)」ハンドバッグは、「FF」ロゴのアクセントを添えたバブルハンドルとギャザーの巾着ポーチを組み合わせ、視覚と触感の両面で印象を更新します。「セレリア(Selleria)」ステッチで縁取った「フェンディ ホーボー(FENDI Hobo)」は、スライド式レザーポンポンで長さ調整が可能。移動手段や服のボリュームに合わせて持ち方を変えられるため、都市生活者の一日に寄り添います
「バゲット(Baguette)」と柔らかな「フェンディ スパイ(FENDI Spy)」は、ケーブルニットシルクで再登場し、手に取った瞬間の質感そのものがスタイリングの要になります。「ピーカブー(Peekaboo)」は透明なフローラルビーズのケージ、スパンコールの内ポケット、編み込みのバスケットレザー構造を備え、遊び心と気品を同時に表現。大ぶりの台形型「フェンディ ウェイ(FENDI Way)」は明るいスエードとカーフスキンを組み合わせ、最小限のゴールドハードウェアでまとめています。荷物量、素材の表情、金具の分量が明確に整理されているため、デイリーユースからドレスアップまでシームレスに使い分けが可能です。
フットウェアは「フェンディ アルコ(FENDI Arco)」スリングバックのカットアウェイサンダルが主役。フック付きブロックヒールにエンジニアードニットパネル、チェーンリンクとレザーコードを組み合わせ、軽快さと存在感を両立します。メンズでは格子細工のローファーや編み上げフラットシューズが並び、手業の確かさが直感的に伝わります。ジュエリーはデルフィナ・デレトレズ・フェンディ(Delfina Delettrez Fendi)が手がけ、フィリグラーナゴールドのカフ、ゴールドとエナメルのナゲットペンダント、エナメルイヤーカフ、珊瑚の形をした「FF」ロゴのイヤリングなどを展開。レザーポンポンチャームを飾ったキャッツアイアビエイターは、ミダス王を想起させるきらめきで軽やかな遊び心を添えます。バッグや服のテクスチャとアクセサリーの素材感を呼応させると、全身の完成度が自然に整います。
音の演出はフレデリック・サンチェス(Frederic Sanchez)。ローマの街を「ピクセル化されたプロムナード」として構築し、イタリア映画史の象徴的な瞬間をサンプリングします。イタリアオペラの要素を織り込みながら、マルチェロ・マストロヤンニ(Marcello Mastroianni)、アヌーク・エーメ(Anouk Aimée)、アンナ・マニャーニ(Anna Magnani)、アラン・ドロン(Alain Delon)の声を、ScannerとMatthias Schubertのエレクトロニックミュージックプロジェクトで合成。視覚の粒度と音の粒度をそろえることで、会場での没入感が増し、ランウェイの記憶が日常の装い選びにも残りやすい構成になっています。
【Editor's View】
このコレクションの肝は、視覚効果だけにとどまらない「軽さの設計」です。バルーンヘムやシアーなジャカードは空気を含み、バッグは構造と装飾の最小単位で表情を変えます。結果として、通勤と週末、都市とリゾートを一枚で横断できる幅が生まれます。色は癒しとして働き、素材は温度を整える。フェンディらしい実用と遊びの均衡が、日常の選択を気持ちよくしてくれます。
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