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ブライトリング がGalletを買収、旅と探検の歴史を受け継ぐスイス時計ブランドが再始動

2023年に行われたUniversal Genèveの買収に続き、Breitlingが新たにGalletを傘下に迎えました。この動きは、Breitlingにとって2度目となる歴史ある時計ブランドの取得であり、高級時計市場における影響力をさらに広げる戦略の一環です。長距離旅行や冒険、探検のために精密な時計を製造してきた伝統を持つGalletは、今後、Breitlingが展開するラグジュアリーブランド群の中でもエントリーレベルに位置づけられることになります。

BreitlingのCEOであるジョージ・カーン氏は、「この買収は当社の成長戦略において極めて自然なステップです」と語っています。さらに、「私たちは、GalletのブランドをBreitlingの技術力とクラフツマンシップのもとで再び活性化させていきます。私たちの構想は長期的なものであり、Galletの冒険的精神とクロノグラフ分野における先進性を尊重しながら、力強いブランドとして再び時計業界にその名を刻むことを目指しています」と述べています。

Partners Groupの共同創業者であり、Breitlingの会長を務めるアルフレッド・ガントナー氏は、「私たちはBreitlingの成長に対して強い信頼を持ち続けています。Breitlingは高級時計市場の中でシェアをさらに広げるにふさわしいポジションにあります。今回のGalletの買収は、私たちが掲げてきた長期的戦略の一環として、極めて重要な意味を持つ決断です」と述べています。

冒険、長距離旅行、探検

Galletは1826年に、時計商ジュリアン・ギャレットによってラ・ショー・ド・フォンにて創業されました。その歴史の中で、冒険や長距離移動の精神を体現するブランドとして知られ、レース、航空、オフロード探検など過酷な環境に対応する堅牢な計時機器を生み出してきました。こうした特性は、Breitlingが長年培ってきたクロノグラフの哲学とも共鳴するものです。

1871年、Galletはアメリカ市場に本格参入し、ジュール・ラシーヌ&カンパニーが北米地域での独占販売代理店となったことで、北米は同ブランドにとって主要なマーケットへと成長しました。1903年には、世界初の動力飛行の計時に使用されたストップウォッチを開発し、ライト兄弟による歴史的な飛行、59秒間・852フィートの飛行距離という成果を記録に残しました。このモデルは「The Sun」と名付けられ、Galletは航空の黎明期に重要な役割を果たしたブランドとして知られるようになりました。

1907年、Galletは時計製造会社ソシエテ・ドゥ・オルロジュリー・エレクタを買収し、新たに「ファブリック・ドゥ・オルロジュリー・エレクタ・ガレット・アンド・カンパニー」という名で企業を再編しました。この統合によって、1926年までの間に数々の技術的革新と特許取得を実現し、国際的評価を獲得する基盤が築かれました。こうした発展は、Galletが精密時計分野で確固たる地位を築くうえで重要な転機となりました。

その後、Galletは主にアメリカ市場に焦点を当て、スイス国内ではエタブリスールとして製造と組み立ての工程を管理しながら、時計の設計に取り組み続けていました。しかし、1970年代から1980年代にかけてスイス時計業界がクォーツショックとスイスフラン高騰の影響を受ける中で、Galletもまた長らく沈黙を余儀なくされました。そして今、Breitlingのもとでその歴史が再び動き出そうとしています。

プロフェッショナルな時計職人

Galletの豊かな歴史の中でも、特に印象深い2つのモデルは、旅行やスポーツ、産業分野で高く評価されてきました。なかでも1939年に発表された「フライング・オフィサー」は、防水性を備えたクロノグラフとして、多数のタイムゾーンを追跡できる機能を持ち、当時始まりつつあった大陸間航空時代において、パイロットや旅客にとって欠かせないツールとなりました。この時代の長距離飛行は、夜間の燃料補給を繰り返しながら数日にわたる航行が必要であり、この時計の重要性は極めて高いものでした。

第33代アメリカ合衆国大統領であり、確固たる指導力を示したハリー・S・トルーマン氏も、Galletの「フライング・オフィサー」を日常的に愛用していました。この時計には、「Col. Truman From Vic Paul」という銘が刻まれており、クリスマスギフトとして贈られた特別なものでした。トルーマン氏は、「これほど精巧な腕時計は見たことがない」と語ったと伝えられています。現在でもこのタイムピースは、ヴィンテージGalletの中でも特に人気が高く、コレクターの間で歴史的価値のある逸品とされています。

もうひとつの重要なモデルが、1938年に発表された「マルチクロン クラムシェル」です。このモデルは、埃や湿気、激しい雨から内部機構を守る構造を持ち、初期の防水クロノグラフとして高く評価されました。モータースポーツやスピードボート、航空をはじめ、様々な競技や環境に対応した複数のバージョンが展開され、Galletの伝統を体現する代表的なシリーズとして長く支持されてきました。

「マルチクロン」シリーズには、「マルチクロン・レギュレーター」も含まれており、このモデルは1940年に開催されたアメリカの名高いフラットトラック・オートレース、スプリングフィールド・マイルで優勝したレックス・メイズ氏に贈られました。この授与は、Galletがモータースポーツ界でも高い評価を得ていたことを示す象徴であり、極限の環境においても卓越した性能を発揮するGalletの技術力を裏付けるものでした。マルチクロン・レギュレーターは、精密性と闘志、そしてハイオクタンな世界観を凝縮したタイムピースとして語り継がれています。

そして現在、GalletはBreitlingのもとで新たな命を吹き込まれようとしています。この買収は、スイスの時計製造における伝統を大切にしながらも、その未来を創造するというBreitlingの姿勢を明確に示すものです。2026年に予定されているGalletの本格的な再始動は、ブランドの持つヘリテージと品質、そして冒険を尊ぶ精神をあらためて称えながら、時計作りの概念に新しい視座をもたらすことになるでしょう。

















       

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