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フェンディ「バゲット」の「ハンド・イン・ハンド」プロジェクト、韓国の伝統工芸「メドゥプ」と出会う

フェンディ(FENDI)の「ハンド・イン・ハンド(hand in hand)」プロジェクトは、アーティスティック ディレクター シルヴィア・フェンディ(Silvia Venturini Fendi)が1997年にデザインした「バゲット(Baguette)」バッグを、各地の伝統工芸を用いて再解釈する試みです。それぞれの土地の工房や職人たちに依頼することで、芸術的価値の高い、真に特別な装飾品を生み出しています。これらの唯一無二の作品には、古代から伝わる手仕事の技術と、その価値が凝縮されています。

アメリカ、日本、中国、マダガスカル、そしてスコットランドと世界中に広がったこのプロジェクトは、2024年、ついに韓国へ。フェンディとローカルアーティストとの草の根パートナーシップ、「ハンド・イン・ハンド」という名前は、各地の職人たちとフェンディの職人たち、その両者の手の出会いによってユニークなコラボレーションが生み出されることを意味しています。今回、韓国では、1本の長い紐を様々な形に結び、留めることで装飾的な結び目を作る伝統工芸「メドゥプ」(Maedeup)の職人、キム・ウニョン(Kim Eun-young)氏と協業しています。彼女は1965年からメドゥプの製作を続けている、この道のエキスパートです。

完成したバッグは、色と技法によって個性的に仕上げられています。慶尚南道(キョンサンナムド)の固城(コソン)郡西部にある文殊庵(ムンスアム)から望む、雲に薄く覆われた夕日にインスピレーションを得たというカラーパレットは、ナチュラルでユニーク。染色した絹糸を天然素材、あるいは人工素材と組み合わせることで、この特別な色合いを実現しています。黄色味を帯びたオフホワイトにはドングリを、アプリコットカラーにはクズウコンを用い、数回の染色を経て独特な色合いを実現。アッシュグレーは、クズウコンで染色した後にグレーに染めることで、韓国の伝統的な夕景を思わせる色合いとなっています。自然とのコントラストを壊すことなく、視覚的に調和するよう、細やかな配慮が施されています。

この「バゲット」には、朝鮮王朝時代、王と王妃の儀式用衣装の装飾に用いられていた「マンス」(mangsu)という技法が取り入れられています。直線、クロス、ウェーブ、木といった特定のパターンが、その形を美しく強調しています。熟練するまでに30年以上を要するという、光沢があり伸縮性のある「スルシル」(sulsil/何重にも撚り合わせた糸で、服の端や周囲を装飾するために用いられる)を複雑に組み合わせて使用している点も注目すべき点です。3,432メートルものフリンジ糸が用いられたバッグは、伝統的なパターンに組み上げられたシルクの控えめな輝きによって、さらに優雅に仕上げられています。

バッグを彩るアクセサリーにも、この「バゲット」ならではの特徴が表れています。サイドのノットから垂れ下がるアンバーには、長寿を象徴する桃と、気品、尊厳、優雅さを象徴する梅の花が彫刻されています。鮮やかな赤い半球状のガーネットが、銀メッキのカプセルに収められ、取り付けられています。バッグの正面にはゴールドメッキ製のメタルバックルが取り付けられ、中央のインサートにはバルティックアンバーが用いられています。すべてハンドメイドで製作されているというこだわりようです。ハンドルと各所のディテールには、お揃いのリザードレザーが使用されています。内ポケットには、キム・ウニョン氏とフェンディ「ハンド・イン・ハンド」のロゴが刻印されています。

フェンディにとって「ハンド・イン・ハンド」は、伝統的な生産方法を現代に継承している職人たちへの賛辞を表す重要なプロジェクトです。古代から伝わる手仕事の技術を、世界規模で維持しようと尽力する職人たちの才能と情熱を、フェンディは信じています。

キム・ウニョンについて

韓国を拠点に活動するメドゥプ職人、キム・ウニョン氏は、1942年生まれ。何十年もの間、装飾的な組紐「メドゥプ」の技能において高く評価されています。梨花女子大学校(Ewha Womans University)で室内装飾を専攻し、芸術の世界へ進んだ彼女。卒業後、偶然目にした新聞記事でメドゥプ職人を知り、その道に進むことを決意します。これが、キム・ウニョン氏と組紐の出会いです。染色を学ぶために40代半ばで大学院に入学したというエピソードからも、彼女の工芸に対する強い情熱が感じられます。30年の研鑽を経て、1995年には初の個展を開催。彼女の卓越した技能は広く知られるようになり、1996年には「ソウルで13人目の組紐の名人」と称されました。ローマ、パリ、京都を含む世界中の美術館で展覧会を開催するなど、60年近くにわたり組紐を作り続けています。メドゥプは非常に複雑な技能と技術を必要としますが、キム・ウニョン氏は作品を通して、組紐が現代の日常生活にも自然に取り入れられる可能性を示しています。組紐に対する彼女の情熱は、作品を世界中の人々の目に触れさせる機会を導き、また、その情熱によって彼女は技術を磨き続けています。1984年には韓国メドゥプ研究所(the Korea Maedeup Research Institute)の副会長に、1997年にはソウル無形文化財教育展示場(Seoul Intangible Cultural Heritage Center)の代表に任命されました。

 
 
 
 
 
      

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