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【ブランド解説】フランク・ミュラー編

●天才時計技師の創造する名機&逸品

 時計業界の中では歴史が浅いながらも圧倒的な技術力と美的センスによって魅了するブランドであり、数々の新機構を発表し話題を集めている。古くから受け継がれた伝統を忠実に継承しつつも、時計に対して常に発想の転換や卓越した美的感覚を高度な技術力をもって具現化するということを時計製作におけるポリシーとしており、マニュファクチュールだけでなくジュエリーウォッチとしても魅力的なモデルを数多くリリースしているフランク・ミュラーの魅力を再検証してみたい。

 1965年、時計産業で有名なスイスのラ・ショード・フォンで生まれたフランク・ミュラーは、幼少期よりイタリア人の母から審美眼を学んでいたこともあり精密機械に興味を示し、その仕掛けの素晴らしさを理解しながら育ち、やがて時計に惹かれていく。当時コレクターズアイテムとなっていた古い時計製造道具や器具に情熱を注ぎ、古い機械式時計があれば分解しては組み立てていた。そして10代半ばにジュネーブの有名な時計学校に入学して最高の教育を受け、更なる技術を磨いていく。この時にフランク・ミュラーは天才的な技術とセンスを開花させ「ブレゲの再来」と話題を集め、3年間で履修すべき単位を1年で取得している。卒業制作では通常の3針時計に永久カレンダーを組み込んだり、ロレックスから製作を依頼されるほどのスキルを身に付けており、時計学校を主席で卒業。有名メーカーがこぞって彼を獲得しようとしたが、フランク・ミュラーは時計メーカーの誘いを断り、アンティークウォッチの修復をする仕事を選ぶ。

 時計学校を卒業後は「独立時計師アカデミー」の会員となり、コレクターや博物館から依頼されるパテック・フィリップなど数多くのマスターピースの修復作業を行う。その一方で独自の創作活動、オーダーメイドでの時計製作も続けていた。この頃からフランク・ミュラーの時計に対する考え方が「修復」から「創造」へと変わり始めていた。そして1986年にオリジナルとして世界で初めてとなる新機構“トゥールビヨン”を発表して時計業界に衝撃を与えた。翌1987年にミニッツリピーター付きのトゥールビヨンを、1989年には永久カレンダーも組み込まれている。さらにリューズひとつで3タイムゾーンの設定が可能なマスターバンカー、3次元にキャリッジが回転するトゥールビヨン・レボリューション、ランダムに配置されたインデックスを時針がジャンプして示すクレイジー・アワーズなど、どれも世界初の画期的かつ斬新な機構ばかりで新作発表のたびに複雑さを増し、フランク・ミュラーならではのユニークなギミック、独創的な世界観が広げられていく。現在では50以上の特許を取得しており、その発想力と技術力は比類なきものと言える。

 フランク・ミュラーが創り出す時計の魅力はメカニズムだけではない。デザイン面においても独自のこだわりを見せている。その象徴とも言えるのが3次元曲面の美しさを追求した樽型のトノー・カーベックス。また丸みを帯びた独特のビザン数字のインデックスも印象的。どのモデルにも共通して言えるのがアンティーク時計の修理で培われた知識と技術に基づくデザインが採り入れられており、シンプルかつ大胆なフォルムで洗練されたクラシカルエレガントな装いが漂っていること。もやは芸術とも言える革新的なコレクションの裏蓋にはスローガンである「Master of Complications」の文字が刻まれている。

 フランク・ミュラーが自身の名前を冠したブランドを創業したのは1991年のこと。ジュエラーかつケースメーカーだったバルタン・マルケスとテクノウォッチ社を設立して“フランク・ミュラー”ブランドの時計を製造。1998年にフランク・ミュラー・ウォッチランドに社名変更して現在に至る。

フランク・ミュラー https://www.franckmuller-japan.com/

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